渡邉優樹容疑者に1億円を運んだ「日本人彼女」の知られざる正体 60億円の犯罪収益は没収できる?
犯罪収益金の行方
「収益の一部は渡邉のフィリピン人妻が経営する飲食店の運転資金にも使われ、その彼女を通じて不動産投資にも資金が回されている。また、隠し口座や金庫に蓄財している可能性も。警視庁は当然、今後の捜査の中で金の行方を突き止めようとするでしょう」(同)
この点、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は、
「一般的に犯行で得たお金を預金するのはまれで、被害者にお金が戻ってくるケースはほとんどありません」
と、指摘する。しかし、元警視庁刑事で、防犯コンサルタントの吉川祐二氏は別の見方をする。
「警察としても被害者救済は大切なので、どうにかして費消されていない犯罪収益を押収しようとするはずです。有罪判決が出れば、被害者に、押収したお金が返還される可能性も十分にある」
たとえ一部であったとしても、被害金の返金に関してはいちるの望みがあるというのだ。一方で、二度と戻ってこないのが先月、東京・狛江市で起きた強盗殺人事件で殺害された女性、大塩衣與さん(90)=当時=の命である。さらに、
「広島でも、昨年12月にグループが関与した強盗殺人未遂事件がありました。頭部を鈍器で殴られた貴金属店経営の被害者(49)は急性硬膜下血腫の重体で、未だに意識不明の状態が続いています」(前出・社会部記者)
失態捜査の代償
なぜ、警視庁は逮捕状を取りながら、その後の一連の凶行を未然に防げなかったのか。
国際捜査共助に詳しい元警視庁の刑事部幹部はこう語る。
「日本が犯罪人引き渡し条約を結んでいるのは、米国及び韓国の2カ国だけです。従って、基本的には、国外に逃亡している犯罪者を逮捕する場合、外交ルートを通じて現地の大使館から捜査当局に捜査共助を要請します。これによって国外退去処分にしてもらうよう促すのですが、それだけでは相手国も本気になって動いてはくれません。やはり、担当の捜査員が自ら現地に乗り込んで、犯人逮捕の重要性を直接、訴える必要などがある。そうすると相手の態度も変わります」
裏返せば、今回、警視庁はどこまでの本気度で“ルフィ”たちの身柄を押さえようとしたのか、甚だ疑問なのである。
「四人が収容施設に入っていたため、逃亡の恐れはないとタカをくくり、真剣に国外退去処分の要請を繰り返さなかったのではないか」(同)
捜査の怠慢のせいで犯人たちにもなめられ、救えたかもしれない命が救えなかったというのである。しかも、こうして事態が動いたのも、
「フィリピン政府が8日のマルコス大統領の訪日前に問題を解決しておきたかったからでしょう。日本政府は、あちらに年間2千億円の支援を5年分、約束していますから……」(同)
失態捜査の代償が年間2千億円の支出とは……。
明確に指示があったのか
人命を奪い、政府をも巻き込んだ前代未聞の罪を犯した首謀者の渡邉容疑者らに対しては当然、死刑に問うべきだとの声が上がっている。
前出の若狭弁護士は直接の逮捕状の容疑である特殊詐欺事件に関して、物証の乏しさなどを理由に捜査の難航を予想しつつ、
「仮に強盗殺人の容疑でも起訴に至ったとすれば、罰は死刑か無期懲役ということになります。また、その場合、実行犯よりも指示役の罪が重くなるということはありうる話です」
一方、次のような見方も。
「強盗殺人なら被害者が一人でも死刑にできる可能性はありますが、ルフィたちから明確に『殺してもいい』という指示内容があったかどうか。その立証が難しければ、市民から選ばれる裁判員はともかく、職業裁判官は無期懲役に減じるのでは」(司法記者)
日本の治安神話をたたき壊し、社会を震撼させた凶悪事件。その首魁には相応の罰が下されるべきであろう。
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