「有原航平」に日ハムファンから批判噴出…日本球界復帰で「沢村拓一」と明暗を分けた理由

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プロ入りした球団で現役を全うするのが“美徳”

 なぜ、有原の日本球界復帰に対して、ここまで否定的な意見が噴出しているのだろうか。

「最近ではだいぶ様相が変わってきましたが、それでも日本ではまだプロ入りした球団で現役を全うするのが“美徳”という考え方は少なからずあると思います。育ててもらった球団に対して選手は恩があり、それを無下にするのはけしからんと考えている人がまだまだ多いですね。有原選手の場合は、特に自らメジャーへの夢を語り、それを球団に理解してもらって移籍したこと。また2年間での短い期間で帰国となったこと。ライバルのソフトバンクと高額年俸で契約したこと。この3点が重なって、日本ハムファンの怒りを買っている印象ですね。この3つの要素のどれか一つでも異なっていれば、こんなに批判されることはなかったと思いますね」(在京スポーツ紙記者)

 これまでもFA権を取得しながら、チーム残留を決めると“チーム愛を貫いた”として持ち上げられることは非常に多い。黒田博樹(元広島)や田中将大(楽天)のように、メジャーで実績を残した選手が古巣に帰ってきたケースでは、ファンの盛り上がりは大変なものがあった。そういった点を考えても、やはり「沢村が賞賛されて、有原が批判される」というのは、日本球界独特の風潮、雰囲気から来ているものと言えそうだ。

スター選手は“事業”

 ただ、強い批判が出ることは、有原自身も理解していたはずで、実際に日本ハムからのオファーに対してもかなり迷っていたという話が出ている。それでもソフトバンクを選んだ背景にはある事情が関係しているのではないかという。

「メジャーに移籍するような選手の交渉は、代理人が行うのが一般的ですが、それくらいの選手になると、あらゆる面でサポートするスタッフや企業などと契約しています。そういう関係者にとって選手というのは『単なる1人の人間』ではなく、多くのお金を生み出す、いわば“事業”なんですよね。自分の意志だけで決められないこともよくありますね。メジャーでは、わずか2年間の在籍で実績を残せなかったとなると、高額なオファーがある球団との契約を勧める周りの声も多かったはずです。報道されている金額(3年契約総額15億円)が正しいのであれば、メジャー時代(2年契約総額620万ドル・約8億1900万円)に比べて、条件が良いわけですから。プレーする有原本人にとっては。プレッシャーや批判の声があって大変だと思いますが、選手を“事業”として考えると、良い契約を勝ち取ったことは間違いないでしょう」(NPB球団関係者)

 より良い条件の球団と契約して多くのサラリーを稼ぐ。そういう意味では、有原はプロのアスリートとして、ある意味「当然の選択」をしたと言える。しかし、前述したように日本球界は古くから球団への帰属意識が強く求められることが多く、高額年俸で移籍した選手への風当たりが強くなる。それは、過去の例を見ても明らかだ。そんな中で、有原は期待通りの活躍を見せることができるのか。これまで以上に“厳しい戦い”となることは間違いない。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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