「ブラッシュアップライフ」で高評価、どんな役柄もこなす女優「安藤サクラ」をつくった生育歴
トップ女優への道
安藤は女優たちの憧れである「キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞」を3回も受賞している。しかも2012年から僅か6年間に獲った。ほかの国内映画賞も山ほど得ており、挙げたらキリがない。
海外での評価も高い。主演映画「万引き家族」は2018年のカンヌ映画祭で最高賞のパルムドールに輝き、審査委員長のケイト・ブランシェット氏らが安藤を絶賛した。民放の連ドラ主演は「ブラッシュアップライフ」が初めてだが、作品を選んでいたからだろう。
安藤が女優の道を歩み始めたのは学習院女子大国際文化交流学部に入学した直後の2004年。劇団四季出身の演出家である故・青井陽治氏のワークショップに通い始めた。
女優を志したのは、えらく早い。幼稚園児の時だった1991年。父親の奥田瑛二(72)が出ていた舞台「幕末太陽傳」を見て、同じ仕事に就くことを決意する。幕末の遊女屋での物語であり、これを観て演じる仕事に惹かれたのは非凡だ。
小学校は学習院初等科。良家の子供たちが多いのは知られている通りだが、それも全く不思議ではない。母親でタレントの安藤和津(70)のほうの祖父が「造船疑惑」で指揮権を発動(1954年)した元大物法相の犬養健、曾祖父が暗殺された元首相の犬養毅なのだから。
それにとどまらない。元共同通信社長の故・犬養康彦氏は叔父、環境保全や飢餓撲滅に尽くした評論家の故・犬養道子氏は叔母、元国連難民高等弁務官の故・緒方貞子氏は親戚、倉敷紡績(クラボウ)創立者の1人である故・小松原慶太郎氏は遠戚にあたる。筋金入りの華麗なる一族だ。
しかし、1周まわったのか、安藤は親しみやすい人として知られる。お高くとまっていない。
例えば「ウンコ」という言葉を平気で口にする。安藤にとって「ウンコを出す」とは、女優然とせず、人間を醜い部分も含めて洗いざらい表現することらしい。
「ちょっと女優さんになってみたくなったら、自分にどんどん制限作っちゃって、そしたらウンコが出せなくなってしまったんですよ」(安藤、「AERA」2015年1月26日号)
それだけではない。画面やスクリーンでは時になまめかしいが、それは演技だけだということを、こう表現した。
「私は心も体も素っ裸みたいな人間なので、色気もへったくれもないですよ(笑)」(安藤、「フィガロジャパン」2022年3月号)
話を学習院初等科時代に戻すと、5年生の時に奥田が出ていた劇団・新宿梁山泊の舞台に立ち、子役の1人を務めた。同劇団はアングラ劇の流れを汲む。その舞台を踏む小学生はそういない。これも英才教育の1つだったに違いない。
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