三笘薫、旗手怜央、伊東純也、上田綺世…欧州では”異色”な彼らの経歴が日本人選手の価値を高める理由

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大学進学のメリット

 ではなぜ、大卒の選手が近年は成功を収めているのだろうか。考えられる原因の一つに、日本の選手には天才的な「早熟型」が少なく、「晩成型」が多いと思われる。その一因として、高校年代までは監督やコーチの「指示待ち」指導により、自主性がなかなか育まれないことが挙げられる。

 その点、大学生ともなれば、レギュラーになるために「自己判断」でプレースタイルやポジション、練習方法などを工夫する必要が出てくる。三笘も高校年代まで川崎Fのユースチームに所属し、卒業後はトップチーム昇格を期待されたが、「まだトップでやれる自信が足りない」という理由から筑波大学への進学を選択した。

 こうした「自己分析」と「自己判断」ができたところからも、彼がクレバーな選手だったことがわかる。

 あるJ1リーグの強化担当者によると、「即レギュラーになれるような飛び抜けた選手でない限り、高校卒業後にJリーグ入りするのはあまり勧められない」と言う。その理由は、「高校まで、言葉は悪いが抑圧されたサッカー漬けの生活だったため、プロになるとその反動で遊びたくなってしまうから」だそうだ。

「適正価格」の視点

 このため、まずは大学に進学し、1~2年生時は雑用をこなしながら上級生の命令に従って厳しく鍛えてもらい、2年生終了時に大学を中退してプロになるのがベターだという。

 なぜ卒業まで待たないのかというと、「3~4年生になると手を抜いても勝つコツをつかんだりして、楽なほうに流されやすいから」だという。それを防ぐためにも、特別指定選手として大学に在学しながら、JクラブでJリーグの試合に出ることを勧めていた。

 その他にも、ボーンマス戦後の三笘が流暢な英語でインタビューに受け答えしていたように、チームメイトとのコミュニケーション能力や社会性も大学生のほうにアドバンテージがあるだろう。

 ヨーロッパでは「異色」とされる大卒のプロ選手だが、日本とは大学の進学率も違えば選手が育つ環境も大きく異なる。そして今回紹介した選手がシーズンを通じて活躍すれば、今後も高卒選手に限らず大卒選手のニーズが高まることが予想される。

 そこで懸念されるのが、「適正価格」だったかどうかだ。三笘は2021年の夏に川崎Fから250万ポンド(約4億円)という格安の移籍金でブライトンに加入した。しかしリバプール戦後は「1億ポンド(約160億円)の価値がある」といった現地ファンの声も聞こえてくる。

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