三笘薫、旗手怜央、伊東純也、上田綺世…欧州では”異色”な彼らの経歴が日本人選手の価値を高める理由
鹿島の「高卒戦略」
改めて紹介するまでもなく、三笘は筑波大学、旗手は順天堂大学、伊東は神奈川大学、守田は流通経済大学、上田は法政大学と、いずれも大卒の選手である。
これまで日本の大卒選手はヨーロッパの移籍マーケットに入ることはなかった。ヨーロッパではバルセロナのMFペドリやMFガビのように、早熟な選手は10代でレギュラーに定着している。22歳を過ぎての参戦は「遅い」というのが常識だった。
過去の成功例を見ても、MF中田英寿やMF小野伸二、MF中村俊輔らは高卒でJ1リーグのレギュラーとして活躍し、その後に海外へと羽ばたいていった。
そうした傾向に、ちょっとした異変が起きた。きっかけは、鹿島であり川崎Fかもしれない。
鹿島といえば、かつては平野勝哉氏という名スカウトマンを擁し、才能あふれる高卒選手を補強しては数々のタイトルを獲得してきた。
古くはFW柳沢敦(富山第一高校→サンプドリア)に始まり、CB中田浩二(帝京高校→オリンピック・マルセイユ)、SB内田篤人(清水東高校→シャルケ)、FW大迫勇也(鹿児島城西高校→1860ミュンヘン)、MF柴崎岳(青森山田高校→CDテネリフェ)、そして最近ではCB植田直通(大津高校→セルクル・ブルージュ)と昌子源(米子北高校→トゥールーズ)らは、いずれも日本代表として活躍した。
川崎Fの「大卒戦略」
しかし鹿島の「高卒路線」は、多くの選手の海外流出につながり、チームは弱体化を余儀なくされた。リーグ優勝は2016年、ACLチャンピオンズリーグは2018年を最後に、タイトルから遠ざかっている。そうした現状を打破しようと、今シーズンはニーム(フランス)から植田を、G大阪から昌子を呼び戻して、守備陣のてこ入れを図った。
彼ら以外にも川崎FからFW知念慶を獲得するなど即戦力の補強で名門復活に挑む。
そんな鹿島と対照的だったのが川崎Fだった。2020年に引退したMF中村憲剛(中央大学)ら「大卒選手」は海外移籍とは無縁と思われた。このため、じっくりとチーム作りができる利点がある。
カタールW杯後に31歳でアル・ラーヤン(カタール)へ移籍したCB谷口彰悟とCB車屋紳太郎は筑波大学、SB山根視来とMF橘田健人は桐蔭横浜大学、FW小林悠は拓殖大学、そして守田に続き三笘と旗手も1年目からレギュラーとして活躍した。
しかし、川崎Fの3選手を筆頭に、海外移籍にチャレンジするのに大卒でも遅くはないということを、ここ1年で多くの選手が実証している。
その一方で、高卒でベルギーリーグのシントトロイデン経由で欧州5大リーグにステップアップしたDF冨安健洋(アーセナル)、MF遠藤航(シュツットガルト)、MF鎌田大地(フランクフルト)のようなケースもあることも忘れてはならない。
いずれも本人の才能と努力があっての成功だが、いろいろな選択肢が増えるのは日本サッカーの発展にとって歓迎すべきことだろう。
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