NFL選手たちのケガを奇跡のように治した日本人・白石宏 「ヒロシのヘルプが絶対に必要なんだ!」(小林信也)
「俺の鍼は違うよ」
約1カ月後、ゴールトから白石に国際電話が入った。
「マクマーンがケガをした。助けてくれ!」
ベアーズが夢舞台への初出場を決めた試合でマクマーンは左臀部を強打、出場が危ぶまれていた。
シカゴに着いてマクマーンの治療をした様子を拙著『招待状のない夢』でこう記した。
〈「昨日なんてヒデエもんだ。痛くて全然動けねえんだ。走るどころじゃないぜ」
他人言の捨て科白(ぜりふ)みたいにジム・マクマーンは言った。(中略)患部はたしかにひどかった。左の尻から太ももにかけて、内出血のため黒々としたアザが大きく広がっている。(中略)
「鍼は嫌いだ、信じない」と言うマクマーンに、
「俺の鍼は違うよ」
ひと言だけ言っていつものように目をつぶり、0.16ミリの細い鍼をマクマーンの白い肉体の内側に滑らせ始めた。〉
白石の鍼治療は、マクマーンの症状を劇的に好転させた。翌日にはアザが消え、少し動けるようになった。それが、チームのヘッドトレーナーには面白くない。プレジデント(クラブの経営者)に直訴し、邪魔者を追い出すよう求めた。
ゴールトは白石を空港に連れて行ったがチームのチャーター便には乗れなかった。白石はゴールトの後援者の家で待機した。夜、彼に呼ばれてテレビの前に急ぐと、WRデニス・マッキノンが質問に答えていた。
「ヒロシがチャーター便に乗れなかったこと、選手はみんな怒っているんだ」
「ペイトンもか?」
「もちろん。彼はヒロシにヒジを治してもらった。俺たちにはヒロシが必要なんだ」
そしてマクマーン。
「これは大問題だぜ。俺がスーパーボウルでプレーするにはヒロシのヘルプが絶対に必要なんだ」
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