NFL選手たちのケガを奇跡のように治した日本人・白石宏 「ヒロシのヘルプが絶対に必要なんだ!」(小林信也)

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 私はスーパーボウルに一度だけ深く関わった経験がある。その伝説が若者たちを触発し、日本にも多くのトレーナーが誕生した意味でも感慨深い思い出……。

 1985年、シカゴ・ベアーズが開幕12連勝。QBジム・マクマーンからRBウォルター・ペイトンのランプレーを中核に旋風を巻き起こした。WRウィリー・ゴールトらへのパスもさえ、マクマーンはパス313回中178回を成功させた。

 ゴールトは83年世界陸上男子400メートルリレーの第2走者で、カール・ルイスらと37秒86の世界新記録をマークし優勝。NFLに入って3年目を迎えていた。シーズン終盤、仲間たちの肉体は悲鳴を上げていた。陸上時代、何度も日本人トレーナー・白石宏の鍼(はり)治療に救われていたゴールトは、12月に一度白石を呼んだ。真っ先にペイトンに紹介した。ペイトンは後にNFLマンオブザイヤー賞にその名が冠されたレジェンド。彼の信頼を得れば白石はチームの治療ができるはずだ。

「何で俺が鍼なんか刺されなきゃいけないんだ!」

 ほえてすぐ、ペイトンは肘を白石の前に突き出した。左肘が子どもの頭ほどに腫れていた。何度もフィールドに打ち付け、滑液包炎を起こしているようだ。

「そんな治療じゃ治らない」

 ヘッドトレーナーが通りすがりに冷笑した。しかし、鍼を打つと風船がしぼむように腫れがすっかり引いた。

「こいつはすげえや」

 ペイトンが目を丸くして叫んだ。その治療で白石は黒人選手たちに理屈抜きに迎えられた。

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