早くも今年のドラフトに“大豊作”の予感…今から覚えておきたい「12人の超有望株」

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スカウトが熱視線を送る“打てる捕手”

 大学生の野手に目を移すと、進藤勇也(上武大・捕手)、広瀬隆太(慶応大・内野手)、上田希由翔(明治大・内野手兼外野手)といった4選手が有望株として浮上している。
 
 なかでも、進藤に対する評価がかなり高い。速さと正確性を備えたスローイングは、プロの選手と比べても上位レベルにあるほか、軽々とスタンドへ放り込む長打力を兼ね備えた“打てる捕手”だ。担当スカウトが、進藤の能力と注目度の高さを伺えるエピソードを話してくれた。

「上武大には、昨年も、強肩で長打力が持つ小山忍(東芝入社予定)という力のあるキャッチャーがいて、進藤と併用されている時期がありました。ただ、同じ大学のキャッチャーを同じ球団が指名することは(1人が控えに回ってしまうので)基本的にできません。そうなると、どの球団の担当スカウトも、(実力が上である)進藤を推しますよね。小山がプロ志望届を出さずに、社会人野球に進んだ背景には、こうしたプロ側の評価があったからだと思います。裏を返すと、それだけ進藤が高く評価されている証拠だと言えますね」

 筆者が、昨年秋のリーグ戦を取材した際には、進藤の好守を熱心に撮影しているスカウトの姿があった。その年のドラフト対象者ではない3年生に、スカウトがそこまで熱い視線を送るのは、非常に珍しいことだ。

 ちなみに小山は、4年秋のリーグ戦で6割を超える打率を残して、MVPを獲得した。実力者の先輩捕手からマスクを奪い、活躍し続けているところにも、進藤の実力がよく表れている。

社会人にも有力株

 最後に社会人のドラフト候補を見てみよう。有力候補は、松本健吾(トヨタ自動車)と度会隆輝(ENEOS)だ。

 松本は、東海大菅生、亜細亜大といった強豪校の主戦投手として活躍してきた右腕。大学時代はボールの力がいまひとつだったが、トヨタ自動車に入社後、フォームを見直して、見違えるように球威がアップした。

 昨年7月の都市対抗では、リリーフで起用され4回をパーフェクトと好投すると、続く11月の日本選手権では、強豪のパナソニックを相手に、被安打1(内野安打)、1四球に抑えて、完封勝利を飾っている。パナソニック戦の投球は、トヨタ自動車時代の栗林良吏(現・広島)と比べても全く遜色がなかった。コンスタントに力を発揮できれば、“ドラ1指名”が見えてきそうだ。

 一方、度会は「2世選手」。ヤクルトで活躍した渡会博文氏(現・ヤクルトアカデミーヘッドコーチ)を父に持ち、中学時代から評判だった強打者だ。横浜高を経てENEOSに入社すると、社会人屈指の強豪チームで1年目からレギュラーに定着した。

 昨年の都市対抗では、5試合で4本塁打、11打点の大活躍で、チームの優勝に大きく貢献し、MVPにあたる橋戸賞を受賞している。バットコントロールは天才的で、長打力も高校時代に比べて向上した。高校卒の社会人野手では、日米通算2450安打を記録した福留孝介(元中日など)以来の“大物”と言える存在で、激しい争奪戦が予想される。

 今回の記事では12人の選手を取り上げた。冒頭で触れた佐々木麟太郎や選抜出場組以外にも有力候補が多く、選抜の開幕を前にした時期に、これほど上位指名が狙える選手の名前がすらすらと出てくる年は非常に珍しい。最終的には誰が一番人気になるのか、ハイレベルな争いにぜひ注目して頂きたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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