「謝られても、まったく許せる気がしない」 かつていじめを経験した作家・燃え殻さんが、生きづらい人々に送るメッセージ
たった1秒前のことのように、心臓の真ん中に痛みが
僕はそれを読んで、あの掃除用具入れの中で、息を潜めていた自分のことを思い出してしまった。大きく揺らされる狭い箱の中、できるだけ体を小さくしながら、僕はタイムマシンを渇望していた。一気に未来に飛んで行ってしまいたかった。
あのとき飛びたかった未来に、いま僕は生きている。タイムマシンに乗って未来に来た、そう感じるときがある。あの掃除用具入れのことを、1秒前のことのように思い出してしまうからだ。
眠って夢に見てうなされる、なんて生易しいものじゃない。山手線でつり革につかまって、車両の揺れに持っていかれないように踏ん張った瞬間、ふと思い出すこともある。たった1秒前のことのように、心臓の真ん中あたりがズキンとする。たった1秒前まで蹴っていた人間に突然謝られても、まったく許せる気がしない。それはさすがに都合が良すぎる。
ただ、あの頃の自分のように、死にたい、飛びたいと思っている人に言いたいことがある。やっぱり、タイムマシンはあった。だから、誰も許さなくていい、未来に飛ぶために生き延びてほしい。
[2/2ページ]