どうする韓国、中国が怖くて半導体封鎖に加われないのか 「ホワイト国」に再指定すれば日本も同罪

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「対北」ではすでに日米韓スクラム

――「日米韓の軍事協力体制を強化するためにも韓国に譲歩すべきだ」と外務省関係者は唱えます。

鈴置:現実とかけ離れた机上の空論です。まず、北朝鮮向けの3国軍事協力。日本が韓国に譲歩する前に、日米韓はスクラムを組み直しました。韓国が一気に前向きになったからです。

 尹錫悦政権は過去の軍人政権並みの対北強硬策を打ち出しています。北朝鮮が核・ミサイルの開発に拍車をかけているからです。政権運営の面からも、国会の過半の議席を左派に握られている中で、保守層の支持を固める必要があります。

「徴用工」問題で日本政府が謝罪したり、日本企業がカネを払わなくとも、韓国の保守政権は北朝鮮に対しては日米と歩調を合わせるほかに道はないのです。

 ことに今、韓国人は台湾海峡での緊張激化が北朝鮮の対南挑発を引き起こすと懸念し始めました。「第2次朝鮮戦争」の際、韓国は日本のバックアップ無しに戦えません(「台湾有事が引き起こす第2次朝鮮戦争 米日の助けなしで韓国軍は国を守れるのか」参照)。

 韓国の軍や保守系の安保専門家の間では「日本との軍事協力体制を一刻も早く固めよう」との意見が増しています。日本が北朝鮮を攻撃可能なミサイルを配備するのに反対するのではなく、日本と攻撃目標を分担する方が合理的だ、との発想です。

 中央日報の「<危機の韓日関係、連続診断28> 軍事力を高める日本…韓日米安保分業構造を議論すべき」(2月8日、日本語版)で複数の識者が「積極的な日本との軍事協力」を主張しています。ちなみに、誰も「日本の謝罪を前提にしよう」とは言っていません。

譲歩は「弱み」と見なす

 一方、中国向けの3国軍事協力。日本の対韓譲歩に関係なく、韓国は消極的です。政権が保守だろうと左派であろうと、韓国の国民に中国に立ち向かう覚悟がないからです。

――「優しくすれば韓国はこちら側に来る。厳しくすれば中国側に行く」と言う人がいます。

鈴置:外務省の人がよくそう言いますが、完全な間違いです。現実は逆なのです。韓国は米中の間で「より激しくビンタをして来る国」の言うことを聞きます。ロシアのウクライナ侵攻の際でも、米国に殴られるまで本格的な対ロ制裁に動かなかったことからも明らかです。

 もし、中国に立ち向かおうとしない韓国に日本が譲歩すれば、韓国は「米日側につかなくても報復されない」と考え、ますます中国側に行ってしまいます。

 韓国人は相手が譲歩してくれば、それを相手の弱みと見なし、さらなる譲歩を要求します。日本人は相手が譲歩すれば、こちらも応じないとまずいと考えがちです。日本人同士なら、それもいいのでしょうが、韓国人は韓国人であって日本人ではないのです。

涙を流した野田首相

――しかし、「韓国が保守政権のうちに関係を改善しておかないと永遠にそのチャンスを失う」と説明する人もいます。

鈴置:外務省関係者があちこちで、そう言っています。岸田首相が「韓国との関係改善待ったなし」、「早急な関係改善」としきりに言うのも、外務省の「洗脳」の結果でしょう。本当は第2次朝鮮戦争に怯える韓国こそが「待ったなし」なのですが。

 野田佳彦政権は2011年10月19日、韓国との通貨スワップの枠を30億ドル相当から600億ドル相当に引き上げました。欧州金融市場の動揺を受け、韓国で通貨危機の可能性が高まったからです。

「野田スワップ」に助けられた李明博(イ・ミョンバク)政権は、ドル不足という苦境を脱した途端に掌を返し、竹島に上陸したり、天皇陛下に謝罪を要求しました。

 反日により、政権末期の権力弱体化を立て直そうとしたのです。李明博政権は保守政権でした。それでもこの様です。保守だろうと左派だろうと、日本から必要なモノを得れば、韓国は堂々と食い逃げするのです。

 注目すべきは、尹錫悦政権の外交チームの中心には李明博政権当時の人材が座っていることです。食い逃げに味をしめた人たちなのです。

 野田佳彦元首相は李明博大統領の話に及ぶと、涙を流して悔しがる、と言います。外務省の振りつけのまま動く岸田首相もまた、涙を流すことになるのかもしれません。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『韓国民主政治の自壊』『米韓同盟消滅』(ともに新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮編集部

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