人的補償で日本ハムに移籍、「5球団競合ドラ1」田中正義は“眠れる才能”を開花できるのか?

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スカウト陣から“驚きの声”

 ソフトバンクは、このオフ、フリー・エージェント(FA)では近藤健介と嶺井博希、日本で実績のある外国人ではオスナとガンケル、そしてメジャー帰りの有原航平を次々と獲得して、3年ぶりのリーグ優勝に向けて“超大型補強”を断行した。その一方で、チームを去る選手の中にも注目の存在がいる。そのひとりが、近藤のFA移籍に伴う人的補償で日本ハムへの移籍が決まった田中正義だ。【西尾典文/野球ライター】

 田中のプロ6年間での通算成績は、34試合に登板して0勝1敗0セーブ2ホールド、防御率4.25。この数字だけ見れば、ソフトバンクのプロテクトから外れるのも当然で、むしろ日本ハムが獲得したことが不思議と感じられてもおかしくはない。それでも、今回の移籍が話題となるのは、田中のプロ入りまでの経緯が理由となっている。

 田中は、創価高で1年夏に背番号1を背負うも、その後は故障に苦しみ、3年夏は背番号8をつけて「外野手兼控え投手」としてプレーしている。ちなみに、その時に、スカウト陣から注目を集めていた選手は、同級生でエースの池田隆英(現・日本ハム)のほうだった。

 田中の才能が大きく開花したのは、創価大2年の春。それまで公式戦未出場ながら、開幕投手を任せられると、リーグトップとなる防御率0.43をマークして、ベストナインを受賞している。

 続く全日本大学選手権でも、初戦でいきなり完封勝利をあげると、続く試合では、優勝候補の筆頭、亜細亜大相手にもリリーフで、4回1/3を1失点、8奪三振と見事な投球を披露。チームのベスト4進出に大きく貢献する。当時からストレートは、コンスタントに150キロ以上をマークしており、筆者は、視察したスカウト陣から“驚きの声”が上がっていたことをよく覚えている。

プロ相手に8奪三振

 そして、田中の名前が、全国のプロ野球ファンの間にも轟くようになったのは、翌年6月の大学日本代表とNPB選抜による「プロ・アマ交流試合」である。

 3回から2番手でマウンドに上がると、4イニングをパーフェクト、7連続を含む8奪三振と、プロの若手選手を相手に、圧巻のピッチングを披露したのだ。

 当時のNPB選抜には、岡本和真(巨人)や山川穂高(西武)という、現在のセ・パ両リーグを代表する強打者が出場していた。山川はレフトフライとサードゴロ、岡本は2打席連続三振と、田中が完璧に抑え込んでいる。

 また、大学日本代表の4年生には、吉田正尚(青山学院大→オリックス1位、現・レッドソックス)をはじめ、上原健太(明治大→日本ハム1位)や高山俊(明治大→阪神1位)、といった上位指名でプロ入りする選手が揃っていた。

 しかし、試合後のスカウトから聞かれる“称賛の声”は、3年生だった田中に寄せられるものばかりだった。この活躍によって、田中は、2016年ドラフトの“超目玉”となり、5球団競合の末にソフトバンクに入団することになる。

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