ゴルフファン憧れの2つの名所が工事中 セント・アンドリュースの“不格好すぎる橋”の改修に非難殺到
「ゴルフの祭典」マスターズ・トーナメントの舞台は、米国ジョージア州にあるオーガスタ・ナショナル。一方、全英オープンの舞台の一つが、英国スコットランドにある「ゴルフの聖地」セント・アンドリュースだ。現在、どちらも工事中なのだが、その“姿勢”は正反対だ。【舩越園子/ゴルフジャーナリスト】
【写真】世界中から怒りや嘆きの声が上がったセント・アンドリュースの橋の改修後の姿。批判を受け、ショベルカーで石畳を破壊・撤去する模様
世界中のゴルファーの憧れ
オーガスタ・ナショナルもセント・アンドリュースも、ファンにはお馴染みのコースだ。そしてどちらのコースにも、ゴルファーなら一度は行ってみたい、あるいは見てみたい名所や名物がある。
オーガスタ・ナショナルは「アーメン・コーナー」、セント・アンドリュースは「スウィルカン・ブリッジ」だ。
どちらも現在、工事中なのだが、世界中のゴルファーが憧れを抱く歴史的名所や名物に手を加えることは、賛否両論を巻き起こしかねない。そして、その大作業に取り組む両者の姿勢が、あまりにも大きく異なっているところが興味深い。
工事は完全非公開
オーガスタ・ナショナルのアーメン・コーナーは、難関とされる3ホール、11番(パー4)、12番(パー3)、13番(パー5)の総称だ。正式名称ではなく、1958年に米スポーツ誌の記者が用いたことから広まったと言われている。
とはいえ、近年は必ずしも難関ホールというわけではなく、昨年大会で13番は全18ホール中3番目に易しいホールに数えられた。
アーメン・コーナーは思わず「アーメン!」と祈りたくなる難度を備えるべし、と考えたのだろう。4月のマスターズ開催を控え、13番ホールは大改造中だ。
しかし、その姿が事前に公開されることはない。マスターズ・ウィークに初めてベールを脱ぐというのが、長年、彼らが踏襲してきた慣例であり、流儀でもある。
これまでもオーガスタ・ナショナルは、1981年にフェアウエイの両サイドにラフを作り、2002年にはコースを大幅に伸長する大改造を敢行。2019年にも5番ホールを伸ばす改造を行なった。そうした工事の計画や詳細は事前には一切公表されず、外部の立ち入りも取材も撮影も受け入れられることはなかった。
もちろん今回も同様だが、米メディアが空撮をはじめとするさまざまな手法を駆使したところ、12番グリーンの右奥にあった13番ティグラウンドがさらに奥へ下げられ、ホールの全長が545ヤードまで伸ばされようとしていることがわかった。
タイガー・ウッズが2位に12打差で圧勝した1997年大会の時より60ヤードも長くなり、昨年大会の510ヤードより35ヤードも伸ばされれば、これまでは短めのアイアンで2オンが狙えた13番は格段に難しくなる。クラブの選択もホールの攻め方も大きく変わるほどの大改造だ。13番のティグラウンド周辺はスキーのジャンプ台のような姿になると見られており、景観も様変わりしそうである。
それでもオーガスタ・ナショナルは、周囲の声に耳を傾けることも、自ら声明を発することもなく、ひたすら我が道を突き進んでいる。その姿勢を批判したり咎めたりする人もいない。「それこそが世界最高のプライベートクラブの在り方だ」という認識が、ゴルフ界には出来上がっているということなのだろう。
[1/3ページ]