フィリピンだけじゃない…カンボジアの収容所もやりたい放題 “唯一の日本人”の生活ぶりとは

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中国人のおこぼれにあずかる日本人

 日本人男性もひとり収容されていた。その日本人はほとんど金がなく、ビザの更新ができずに不法滞在したことで収容所に入れられていた。飛行機代を用意できないようで、いつ帰国できるかわからない状態だったという。

 私に話をしてくれた元収容者は、この日本人を気遣っていた。収容所内でときどき話をしたという。彼は金がなく、収容される前は、水田にいるタニシを獲って食べてカンボジアで生活していたこともあったらしい。収容所内でも、中国人が頼んだ宅配料理の余りをもらっていた。1階に届いた食事は、職員がロープで引き上げて2階にいる収容組に渡すのだが、日本人はそれを手伝い、職員から飲み物などももらっていた。

 元収容者はこういった。

「日本人は食事がタダから天国だっていったけど、私から見れば地獄。物を盗る収容者もいるから、油断もできない。中国人はなにを持っているかわからない。彼らは金があるからなんでもできる。刑務所と違って甘いから、かえって危険。もう2度と入りたくない」

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)
1954(昭和29)年、長野県生れ。旅行作家。『12万円で世界を歩く』でデビュー。『ホテルバンコクにようこそ』『新・バンコク探検』『5万4千円でアジア大横断』『格安エアラインで世界一周』『愛蔵と泡盛酒場「山原船」物語』『世界最悪の鉄道旅行ユーラシア横断2万キロ』『沖縄の離島 路線バスの旅』『コロナ禍を旅する』など、アジアと旅に関する著書多数。『南の島の甲子園―八重山商工の夏』でミズノスポーツライター賞最優秀賞。

デイリー新潮編集部

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