ポストコロナで急回復する観光需要が航空運賃の高騰を招く理由
米国政府は1月30日「2020年3月に発令された新型コロナウイルスの感染拡大に伴う国家非常事態宣言を5月11日に解除する」と発表した。米国では感染対策のための制限は既に大幅に緩和されている。
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日本も新型コロナウイルスの感染症法上の分類を大型連休明けの5月8日に「5類」に移行する方針を固めており、社会経済の正常化に向け大きく舵を切っている。
世界が名実ともに「ポストコロナ」に移行する中、その恩恵を最も受けるのは観光業界だと言っても過言ではない。
国連世界観光機関(UNWTO)は1月22日「今年の国際観光客数はコロナ前の95%まで回復する可能性がある」との試算を示した。
昨年の国際観光客数は9億人超で2021年の約2倍となったが、コロナ前の2019年比では63%にとどまっている。欧州や中東を訪れた観光客が8割まで戻った一方、コロナ規制を敷く国が多いアジア太平洋地域は2割と低調のままだ。
世界の観光客数がコロナ以前の水準に戻るために欠かせないのは中国からの観光客だ。
中国政府は昨年12月にゼロコロナ政策を解除しており、中国からの旅行が本格的に回復すれば、今年の国際観光客数は昨年を大幅に上回る公算が大きい。
国際観光客数の増加は世界の航空乗客の輸送量の拡大につながる。
世界有数の航空機リース企業「アボロン」は1月中旬「世界の航空乗客の輸送量は早ければ今年6月にコロナ前の水準に戻る」との見通しを明らかにした。
昨年の航空乗客の輸送量は北米や欧州地域の活況で7割の水準にまで復調しており、米国の航空大手の業績はV字回復している。
米国大手3社の昨年第4四半期の純利益が1月26日に出揃い、合計が24億7400万ドルとなり、コロナ前の水準を初めて上回った。
日本の航空業界も回復
業績改善の立役者となったのは、旅行需要の増加とそれに伴う客単価の上昇だ。
既に復調していた国内線に加え、渡航規制の緩和により米国と欧州を結ぶ国際線の需要が復活した。旅客数の増加に伴い搭乗率が上昇した結果、運賃が上昇し客単価が増加するという好循環に入っている。
中国のゼロコロナ政策の解除などにより「最後の欠けたピース」となっていたアジア太平洋路線の回復が進むとの期待も高まっている。エコノミストらがリセッション到来を警告しているのにもかかわらず、米航空業界は旅行需要について強気の姿勢を崩していない。
日本の航空業界も回復基調を辿っている。日本航空の昨年12月の国際線の旅客数は2020年2月以来2年10ヶ月ぶりに40万人を突破した。
コロナ禍で辛酸をなめた航空業界は「我が世の春」を迎えている感が強いが、落とし穴はないのだろうか。
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