妻とも不倫相手とも別れがたくて… 自分の“ゲスなひらめき”を一生後悔するアラフィフ夫の悶え

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今さらの苦しみ

 そして今の彼の家庭の状況といえば、長男は大学生に、双子の娘は高校生になった。両親の間に意思疎通がうまくはかられていないことはわかっているようだが、とりたてて言い争うこともないので、家庭は表面的には穏やかだ。

「義父は4年ほど前に亡くなりました。義母は介護施設にいます。妻は実家を売ったようですね。ほとんど相談もなかったので、どのくらいで売れたのかわかりませんが」

 巧憲さんは、ときどき20代からの「時間の流れ」に思いを馳せる。自分は老いに向かって一直線の日々。だが自分の子どもたちも、芙美恵さんも、自分の子かもしれない芙美恵さんの娘も、人生はこれからだ。それが少し羨ましくもある。あの時点に戻れたら、別の道を選択していたら、と思いは広がっていく。

「妻とちゃんと向き合うべきだった。そこがいちばんの後悔ですね。芙美恵との関係も、ずるずる続けるべきではなかった。彼女が結婚した時点で、どうあってもやめるべきだった。わかっているんですよ、すべて。だけどそれができなかった。この先、いろいろなところから報復されるのかもしれません。芙美恵の夫となった後輩や、妻や、あるいは自分の子どもたちから……。それはきちんと受け止めるつもりです」

 そろそろ更年期なんでしょうか、なんとなく心身ともに不調で、と少しだるそうに巧憲さんは言った。もう少し開き直れれば、「こんな人生だけど何が悪い」と言えてしまえば楽になるのかもしれないが、それができない程度に「いい人」ではあるのだ。逆にいえば、肩で風を切って歩くようなタイプではないからこそ、今になって悶えるように苦しんでいるのかもしれない。

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「社内結婚した妻が実は上司とデキていた……」亀山氏の過去の取材にも、こうした体験を明かす男性は少なくなかった。今回の巧憲さんの話は、そんな上司側からの視点といえるだろう。

 円満とはいかないものの家庭は維持され、不倫相手ともうまく付き合い続けている。一見、巧憲さんは不倫の「成功例」といえるかもしれない。だが本人は「この先、いろいろなところから報復される」と、自分の選択を悔いてもいる。

 報復については今のところ「きちんと受け止めるつもり」と覚悟しているが、もしバレなかった場合はどうするのだろう。心身ともに不調を抱えやすい年齢になったうえに、さらに罪悪感を抱えたまま生きていくことはできるのか。墓場までもっていく覚悟はできるのか。耐えきれず暴露し、すべてを失う事態を招いてしまうことだって考えられる。

 実は巧憲さんが進んだ3つ目の道は理想的でもなんでもなく、最もシビアな「修羅の道」なのかもしれない。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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