妻とも不倫相手とも別れがたくて… 自分の“ゲスなひらめき”を一生後悔するアラフィフ夫の悶え
「私、結婚して幸せ」
ふたりが結婚してから2年強がたつ。後輩は「芙美恵には尻に敷かれっぱなしですよ」と頭をかくが、どうやら幸せそうだ。その様子を見ると、巧憲さんは自分の選択が間違っていたのではないかと背筋が寒くなる。
「芙美恵は、生まれた娘はあなたの子よとたびたび言います。出産前後を除いて、彼女との関係は変わっていません。ふたりで芙美恵の夫を騙しているわけですよね。最近は、職場の勤務時間がかなりフレキシブルになったので、昼間、芙美恵と会っています。目の前の後輩の妻に会いに行くって、スリルがあるともいえるけど、今の僕にはなんだか罰を受けているような気分です。つい先日、芙美恵に会いに行こうと立ち上がったとき、その後輩が『あ、先輩。そういえば、芙美恵が感謝していました。電話するって言ってましたよ』と言い出した。その前の週かな、芙美恵の娘の誕生日だったから、かわいい絵本を数冊、自宅に送ったんですよ。そのお礼ということなんでしょうけど、なんだか不思議な気持ちになってしまいました。僕の娘かもしれないのに。そして僕は今から、後輩を裏切って彼女に会いに行くのに」
芙美恵さんにそのことを話すと、「だって私とあなたは別れられないんだもの。しかたがないと思う。でも私、結婚して幸せ。あのまま独身だったら、たぶんあなたの家庭を壊していたはず」と真顔で言った。女は怖いと巧憲さんはつぶやいたが、もともとそれを持ち出したのは彼自身である。
[7/8ページ]