妻とも不倫相手とも別れがたくて… 自分の“ゲスなひらめき”を一生後悔するアラフィフ夫の悶え

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 男女問題を30年近く取材し『不倫の恋で苦しむ男たち』などの著作があるライターの亀山早苗氏によると、「独身女性と恋に落ちた既婚者がとることができる道は、3つある」という。妻と離婚して彼女と再婚する道、彼女と別れて家庭に戻る道、そして彼女の了解を得て現状を維持する道だ。

 不倫する男性の立場からすれば、3つ目の道が理想的なのかもしれない。過去に亀山氏が取材した男性にも、お相手がバツイチだったり独身主義だったりで、うまくいったケースがあるようだ。

 とはいえ、そんな都合の良い状況はいつまでも続くものでもない。妻にバレて離婚を言い渡されたり、彼女の心変わりで別れを告げられれば、自分の意志とは関係ないところで事態が動き、人生が転落してしまうこともある。

 その点、今回、亀山氏が取材した男性は自ら「ゲス」と評するひらめきにより、今のところうまくやっているのだが……。

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 そのときの感情に任せて「まずい手を打つ」ことだけは避けたいものだが、なんせ「恋」にはまった男性のすること。ある意味、脇が甘くなって当然でもある。

「昔のことを懺悔したいと思っている男性がいるんだけど、話を聞いてみる?」

 知人にそう言われて会ったのは、酒井巧憲さん(46歳・仮名=以下同)だ。この年齢なら、昔のことといっても、それほど遠い過去ではなさそうだ。中肉中背、明るいチェックのマフラーがセンスのよさを感じさせる。ニコッと笑ったとき、目尻が垂れて愛嬌があった。

「いやもう、どこから話したらいいのか……」

 そう言いながら、待ち合わせたカフェのメニューを見ながら「ちょっと糖分入れたい気持ちなんですが、つきあってもらえますか」とケーキのページを指し示す。しばらくケーキの話をしながら、自分を落ち着かせようとしているのか、私の戦闘意欲を下げようとしているのか。もちろん、そもそもこちらに戦闘意欲はないのだが。

 ケーキを注文し、世間話をしながら本題に入った。

 巧憲さんが結婚したのは25歳のときだという。かなり早い結婚だ。相手は同期入社の夏鈴さん。

「入社3年目で結婚したので、周りの先輩や同期からは『これから独身を楽しむ時期なのに、大丈夫か』と心配されました。でも僕は早く家庭を作りたかった。仕事に真剣に取り組むためにも」

 けげんな顔をした私に、彼は「今どきはこんなこと言ったらダメですよね」と、いたずらが見つかった子どものような顔をした。つまりは、妻に家庭に入ってもらい、家事育児は任せて、思い切り仕事をしたかったということだ。彼はそれほど、会社と仕事に愛情を持っていたと釈明した。

「僕が無理矢理、妻を退社させたわけじゃありませんよ。妻はもともと、ずっと仕事をしていくつもりはなかったんです。それはつきあっているときからわかっていました。結婚にあたって『仕事辞めたい』と言われたんですが、まだ僕も薄給だったし、もうちょっとふたりでがんばってお金を貯めようと説得しました」

 結婚して2年たち、妊娠。夏鈴さんは堂々と退職した。つわりも軽かったため、それからは料理学校に通ったり、もともと好きなお菓子作りに精を出したり。職場に持っていってとクッキーをたくさん焼いてくれることもあった。

「これが本当においしくて。職場でも喜ばれていました。妻は自分の望む生活を送ることができてうれしいと言っていました」

 生活費もうまくやりくりしてくれたし、彼は妻として夏鈴さんを選んだ自分の目に狂いはなかったと、日々の生活に満足していたという。27歳で長男、30歳で長女と次女の双子に恵まれた。

「さすがに3人の子をワンオペで見るのは大変だったので、妻の母が1時間ほどかけて来てくれていました。僕が出張のときは泊まっていくなど、臨機応変に対応してくれたので助かっていた」

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