警視庁公安部のお粗末すぎる捜査…国賠訴訟を起こした大川原化工機幹部が語る「中国不正輸出冤罪事件」全真相

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 2020年3月、大川原化工機株式会社(本社・神奈川横浜市)の社長ら3人が「武器に転用できる機械を中国に違法輸出した」として警視庁に逮捕された。しかし、公判直前に起訴が取り消され、検察は事実上の「敗北」を認めた。違法な逮捕や長期勾留などによって損害を受けたとして、同社らは国家賠償請求を提訴。警視庁公安部による強引な捜査に迫る。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

総額約5億6000万円の損害賠償請求

 寒風が吹き荒ぶ1月27日、東京地裁の712号法廷(桃崎剛裁判長)で国家賠償請求審の口頭弁論が行われた。

 原告は、大川原化工機、同社の大川原正明社長(73)、島田順司元取締役(69)、故・相嶋静夫元顧問の妻・長男・二男。被告側には国と東京都の代理人の8名が並んでいた。

 2021年9月に提訴、昨年12月に追加提訴された裁判は、ようやく双方の主張が出揃ったところだ。裁判長が求めた意見書の文書提出命令について、被告側は「2カ月いただきたい」と要求。しかし、裁判長は「それは長すぎる。2月の末までに」と強く催促し、紆余曲折の末、提出期限は2月24日となった。

 原告代理人の高田剛弁護士は、今後、警視庁関係者や検察官、科学者などの証人を申請することを明らかにし、「裁判長があれだけ被告側に(意見書の)早期提出を促すのは珍しい。意欲的に進めたい意思の表れでは」と期待感を込めて話した。東京大学薬学部出身という異例の経歴を持つ高田弁護士は、どこか気鋭の芸術家のような風貌だ。

 同社の元顧問で当時72歳だった相嶋さんは、長期勾留中に悪性の腫瘍が進行。勾留執行停止が認められ入院したものの、手術は間に合わずに亡くなった。そのため相嶋さんの遺族が大川原社長らとともに、東京都(警視庁)と国(検察庁)に対して総額約5億6000万円の損害賠償請求を起こした。

 この日、大川原社長は、「今度の裁判長はちゃんと見てくれると思うけど、相嶋さんの一件にしても、本来は裁判官にも責任があるんですよ。検察の勾留延長を認めてきたのは裁判官なんですから。相嶋さんはどんなに無念だったか」と話した。

 相嶋さんは、病状を心配した妻から「嘘でもいいから(罪状を)認めて出してもらってほしい」と弁護士を通じて伝えられても信念を曲げなかった。そして、検察が白旗を上げる約5カ月前の2021年2月7日に亡くなった。

「生物兵器に転用可」とされた輸出品

 警視庁公安部が捏造したこの「冤罪事件」について改めて説明する。

 直接の容疑は外為法(外国為替及び外国貿易法)違反。武器に転用できる製品の輸出は禁止されている。ただし、「輸出には経済産業大臣の許可を得る必要がある」という条項があり、それに違反したという案件である。

 問題とされたのは、大川原化工機の主力製品「噴霧乾燥機(スプレードライヤー)」。これが生物兵器の製造に転用できるとされた。

 噴霧乾燥機は、ステンレス容器内に噴射した液体に高熱をかけて瞬間的に粉末にする装置だ。コーヒーやスープの粉末、医薬品、バッテリーの材料など、様々な用途に使われている。トップメーカーの大川原化工機はこの噴霧乾燥機で国内シェア約70%を誇り、海外にも輸出している。大川原製作所(静岡県吉田町)の子会社として大川原正明社長の父親・嘉平氏が1980年に創業し、静岡名産のお茶の葉の乾燥機を製造する機械メーカーとしてスタートした。

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