大谷でも解消できない「最強侍ジャパン」の致命的欠陥 「ダルビッシュ依存」の栗山采配に危惧の声
「クローザー大谷」は断念?
米大リーグ、パドレスのダルビッシュ有投手(36)が自身のツイッターで3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けた日本代表の宮崎合宿に、初日の2月17日から合流すると明らかにした。大谷翔平(エンゼルス)ら他のMLB球団所属選手の合宿参加が危ぶまれている中、チームにもファンにも朗報となった。ダルビッシュは今季がMLB12年目。その実績などでパドレスから調整に関しては相当程度、任されているようで改めて別格の存在感を知らしめる形になった。さらに、ここに来て大会中は準決勝以降などの大一番でのクローザー起用が取り沙汰されるなど、日本代表は「大谷のチーム」から「ダルビッシュのチーム」への色が濃くなってきた。【木嶋昇(きじま・のぼる)/野球ジャーナリスト】
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栗山英樹監督は1月27日の「報道ステーション」(テレビ朝日)に出演した際、ダルビッシュにWBC本番でのクローザー起用の話を持ちかけたことを明かした。その上で「(ダルビッシュは)『監督、何でもします』というような雰囲気は持ってくれている。誰かが(役割の)幅を広げていかないといけない可能性はある」と実現の可能性を否定することはなかった。
栗山監督は当初、愛弟子の大谷のクローザー起用を視野に入れていた。しかし、大谷の起用法に関してはエンゼルスとの調整が済んでいないという。「翔平に関しては(二刀流の)打者との兼ね合いがあり、こっちが自由に(起用する)という感じはなかなか……」と言葉を濁し、制約が多くなることを覚悟している様子だった。
確かに大谷はクローザーに最も必要な三振を取れる能力が高く、資質はある。大会途中での先発からの転向は難しい役回りだけに、栗山監督はコミュニケーションが取りやすく、実際に日本ハム時代に救援起用したことがある大谷を抑えに据えたい気持ちはあっただろう。
しかし、その構想は断念せざるを得ない状況になっている。
「年が明け、エンゼルスは球団売却を中止することになった。今後は他球団の若手有望株を引き替えにした大谷のトレードが選択肢にあるため、故障でもされると商品価値に傷がつく。代表での大谷の起用法には、よりエンゼルスが口出しするようになっているのではないか。大谷の抑えは白紙になったとみている」(米大手マネジメント会社の代理人)
不安だらけの抑え候補たち
否が応でもダルビッシュには先発、抑えでのフル回転への期待が高まっているのだ。
そもそもクローザーを先発陣から賄うアイデアの背景には、日本代表のリリーフ投手が不安定なことがある。MLBでもトップクラスのクローザーを擁する米国、ドミニカ共和国に比べると、どうしても見劣りする。
「今回の日本代表は史上最強であることは間違いない。ただし、弱点がないわけではない。中でも最大の不安要素は、これまでのWBCでも苦労してきた抑えだろう」(元WBC日本代表コーチ)
所属チームでクローザーを務める松井裕樹投手(楽天)、大勢投手(巨人)、栗林良吏投手(広島)らの中から抑えが定着することが望ましいが、最悪の事態を想定する必要はある。
日本代表は過去のWBCでクローザーが鬼門だった。特に09年は藤川球児投手(当時阪神)の状態が上がらず、準決勝からダルビッシュが代わりにその役目を担った。
「抑えはWBCの開催時期に100%の状態に持っていくのは難しい。にもかかわらず、わずかな制球ミスさえ許されないポジション。松井は制球が不安定で、大勢は変化球の精度が課題。栗林は1年目のような力がない。栗山監督は絶対的な抑えを確立できるかどうか、不安が尽きないのだろう。だからこそ、ダルビッシュの起用を検討しているのだと思う」(NPB球団元監督)
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