田中将大「WBC落選」で失ったプライドより大きなモノとは “神の子”の「打算」と「誤算」

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第2先発でも若手投手に見劣り

 今回のWBCではダルビッシュ有(パドレス)、大谷翔平(エンゼルス)、山本由伸(オリックス)、佐々木朗希(ロッテ)の4投手の第1先発グループに続く、第2先発グループ入りが検討された。

「現状でマー君の力は(実際に代表入りした)伊藤(大海=日本ハム)、高橋(宏斗=中日)ら第2先発候補と天秤に掛けても劣っていた。救援では使えず、希少性が高い左腕でもない。WBC、五輪での豊富な国際経験を若手に還元できる強みはあるが、その役目はダルが十分に担える。他の強豪国のメジャー選手の情報という点でも、メジャーから2年遠ざかっているため、鈴木(誠也=カブス)ら現役の日本人メジャーリーガーに比べ、アドバンテージに欠ける。たとえマー君がどんな役割でも辞さないと言っていたとしても、栗山監督ら首脳陣には代表に入れる根拠が弱かったということ」(前出の元監督)

 予備メンバーに入れば、代表選手がけがなど不測の事態に見舞われた際に招集される可能性はある。しかし、田中ほどの実績がある投手に、臨機応変の調整が求められる予備メンバー入りの実現性は極めて低い。田中は23年シーズンへ向け、宮崎合宿を含めたWBC期間中は楽天でキャンプ、オープン戦をこなし、あと10勝に迫った日米通算200勝へ調整することになりそうだ。

WBC選出ならシーズンで好成績のジンクス

 今の田中では、2桁勝利は確定的ではないにしても、今季中の大台到達は十分にあり得る。本人も200勝を通過点と捉えている。

「マー君は過去、WBCに出場した2シーズンで09年は当時キャリアハイの15勝、そして13年はあの伝説の24勝。WBC代表になれば、レギュラーシーズンで好成績を残すというジンクスがあった。WBC出場が負担となり、シーズンで成績を落とす選手は少なくないのだが、田中は逆にシーズンでは調子を上げた。今回は選ばれたとしても主力ではなく、負担が大きすぎるということはなかった。験を担ぐ意味でも出場したかった気持ちは分かる」(同前)

 しかし、田中のWBC志願は験担ぎだけが理由ではなかったようだ。米大手マネジメント会社代理人が明かす。

「田中は昨季までの楽天との2年契約でも1年目終了後に破棄し、メジャーに復帰できる内容になっていた。実現はしなかったが、このオフも海外フリーエージェント(FA)権を行使するかどうかを検討した。ヤンキース時代に見せたポストシーズンでの勝負強さはいまだにメジャーで強い印象が残っており、本人にもメジャー復帰への思いが消えていない。ただ、FA宣言の期限までには条件面で思うような感触が得られなかった。そこでもう1年は日本でプレーし、200勝を達成した後に来季、再びメジャーを目指す青写真を描いたようだ。そのために今回のWBCに出て、メジャーの一線級の打者相手に、健在ぶりを示したかったのではないか」

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