今もジャニーさんのブロックサインを思い出す……一人三役・錦織一清が語る舞台「サラリーマンナイトフィーバー」
サラリーマンの悲哀
錦織:そのため、サラリーマンを観察しました。友人からも「娘が難しい年代になってきた」なんて話を聞かされていたし、居酒屋に行けば仕事の愚痴や上司の悪口なんかを言っているのも耳にすることができる。サラリーマンの悲哀を研究したわけです。この芝居を見た別の知り合いは、「ニッキさん、よくサラリーマンのことを調べたよね」って感心してくれました。でも、みんな錯覚しているんです。「サラリーマンナイトフィーバー」は確かにサラリーマンが主人公だけど、会社で働いているシーンは一つも出てこない。サラリーマンが会社で仕事をしている姿は、僕にはわからないですからね。
――昨年10月の大阪松竹座以来の上演となる。舞台人にとって三越劇場とはどんな劇場だろうか。
錦織:日本橋には三越劇場や明治座など色々な劇場がありますが、やっぱり格式がある。昔から江戸城の東側、浅草に行けば寄席とか、両国の国技館とかね、文化の発祥地だったんだなと思わせるところがあります。そして下町で育った僕にとっては、子供の頃に自転車でギリギリたどり着くことができるテリトリーでもあったわけです。ホーム的な安堵感もありますね。さらに僕にとっては、以前に三越劇場で演出をさせていただいたことはありましたが、板(舞台)を踏んだことはなかった。それが今回は板を踏ませてもらえるということで、すごく感慨深いものがあります。
――2月7日の上演後、少年隊の植草克秀(56)がアフタートークショーに出演することが発表された。
植草「セリフが苦手」
錦織:今回、植草が見に来るというので、何かできないかと急に決まったんです。そもそもこの舞台は、2020年2月に本所松坂亭劇場(東京・墨田区)という小劇場から始まったものなんです。僕は脚本と演出だけで出演はなかったんですが、その初日に植草が見に来てくれた。昨年も稽古場まで来てくれたくらい、植草はこの作品を愛してくれている。
――彼は「舞台に出たい」とは言わないのだろうか?
錦織:紆余曲折あったんですけどね、なんか「セリフが苦手だ」とか言って逃げられてしまいました。昨年末には二人でディナーショーも大阪でやったんですけど、久しぶりに演劇での共演もいいなと思っています。今回は叶いませんでしたが、ゆくゆくは共演も面白いと思っています。
――そんな錦織さんの舞台観は、どのようにして培われたのか?
錦織:僕を育ててくれたのはジャニー喜多川さんと、つかこうへいさんです。二人とも舞台が大好きで仕方がない人たちです。
――ずいぶんタイプの異なる二人だ。ジャニー喜多川氏の舞台とは?
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