人口減少でディストピア化する日本 豊かに暮らすための「四つの方策」とは
「戦略的に縮む」
日本が人口減少とともに“輝き”を失えば、すべてが悪い方向へと向かう。
いつまで先進国でいられるか分からないのに、人口減少対策の動きは鈍い。それどころか、人口減少など「別世界」とばかりに、国内シェア争いにまい進している企業が多い。現在の需要しか見ていないような大規模な開発計画も全国各地に目白押しである。空き家問題が深刻化しているのに、新築住宅はいまだ建てられている。
人口が増えていた時代の「拡大」による成功体験が染みついているのだ。だが、国内マーケットは確実に縮小していくので、このまま「拡大」のみで突き進めば必ず破綻する。内需だけで経営を成り立たせている企業は死活問題に直面する。
人口減少社会で豊かさを維持していくには、経営手法をはじめ、思い切って社会の仕組みを変えるしかない。そのためには「戦略的に縮む」ことである。
まずは企業が国内マーケットの縮小を前提とし、それでも成長し得る経営モデルへと転換することだ。
いや応なしに消費者が減るのである。売上高を増やすことで利益を拡大させる経営スタイルは人口減少社会では通用しない。
少子化が進むにつれて、人手不足も恒常化する。配送するドライバーや販売する小売店の店員も含め、関連する業種がすべて縮小するのだから、1社だけが拡大路線にこだわろうと考えてもうまくいくはずがない。
とはいえ、単純に売上高を減らせば、当然ながら企業は存続しえない。そこで目指すべきは少量販売でも利益を増やす経営モデルだ。そのためには、付加価値を向上させることである。
「生活に必要なモノ」は売れる
消費者は自分にメリットがあると思えば多少無理をしてでも購入する。例えば、スマートフォンだ。その利便性の高さは多くの人に「生活に必要なモノ」として認められ、決して安い買い物ではないが、瞬く間に普及した。
ヨーロッパの企業に見られる洋服やハンドバッグなどのブランド品も同じだ。企業の生産能力に応じた数しか製造しないが、経営が成り立つには十分な利益を獲得している。顧客のニーズをしっかり把握し、必要とされるモノやサービスを、必要とされるタイミングで提供することで付加価値を高めているのである。
消費者が必要とするモノやサービスを提供しさえすれば、マーケットの縮小で売上数がこれまでより少なくなったとしても、単価を高くすることによって利益をむしろアップさせることは可能なのだ。
厚利少売で成功しているのが、イーロン・マスク氏が率いる米国の自動車会社テスラだ。他要因もあるので単純には比較できないが、1台あたりの純利益が他社を圧倒している。22年7~9月期決算を見ると、販売台数はトヨタ自動車の8分の1ほどで、純利益はほぼ同じである。
[4/6ページ]