鳥インフルエンザの急拡大で鶏卵価格は2倍に…新たなパンデミックが発生するのも時間の問題か
人への感染、楽観は禁物
気になるのは「鳥インフルエンザが様々な鳥にうつりやすくなっている」との指摘だ。鹿児島県出水市では鳥インフルエンザで死亡したとされるツルの数がは例年の10倍以上の1300羽超だった。
哺乳類への感染例も報告されている。昨年4月、北海道でキタキツネとタヌキの体内から鳥インフルエンザウイルスが検出されている。
鳥インフルエンザの人への感染は心配する必要はないと言われているが、「楽観は禁物だ」と筆者は考えている。
インフルエンザウイルスは、HA(ヘマグルチニン、18種類)とNA(ノイラミニダーゼ、11種類)という2つの抗原によって分類されている。
世界で感染が拡大している鳥インフルエンザはH5N1型だ。
これに対し、人に感染するインフルエンザはH1N1型とH3N2型だ。
ウイルスが感染するためには宿主の受容体(レセプター)と適合する必要がある。
H5N1型インフルエンザは鳥のレセプターと適合できるが、人のレセプターとは適合しづらいとされている。ただちにパンデミックが起きる心配はないが、鳥から人への感染例は少なからず発生している。
H5N1型インフルエンザの人への感染が最初に報告されたのは1997年5月、香港だった。18人が感染し、そのうち6人が死亡した。
2003年末頃から東アジア諸国(日本は除く)でも人への感染例があらわれ、その後、欧州や北米、アフリカなどにも波及した。
世界全体の感染者の累計は868人に上り、457人が亡くなっている。
政府は新型コロナのパンデミックに対処するため「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づく措置を講じているが、H5N1型インフルエンザがパンデミックを引き起こした場合への備えがこの法律が制定された理由の1つだった。
新型コロナの登場で注目されることがほとんどなくなったが、つい最近まで「次のパンデミックは鳥インフルエンザ由来だ」と警戒されていたのだ。
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