“闘将”星野仙一監督の熱い説得で“断念”も…幻と消えた「日本人メジャーリーガー」

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「変に誤解されると困るので話せません」

 ポスティングでのメジャー移籍を目指していた、藤浪晋太郎(前阪神)がアスレチックスと年俸325万ドル(約4億2000万円)で契約し、1月18日に入団会見を行った。その一方で、過去にはメジャー入りを熱望しながら、最終的に断念した“幻の日本人メジャーリーガー”も何人か存在した(金額はいずれも推定)。【久保田龍雄/ライター】

 1984年オフ、大リーグ移籍を前提に、球団に退団を申し入れたのが、藤浪の大先輩にあたる阪神のリリーフエース・山本和行である。

 24セーブを挙げ、2度目の最優秀救援投手に輝いた同年12月13日、山本は契約更改に先立ち、「13年間阪神でプレーしてきて、いろいろなことをすべて話したい」と希望し、球団側と話し合いの場を持った。

「変に誤解されると困るので話せません」(山本)と、会談の内容は明らかにされなかったが、翌14日、一部のスポーツ紙が、山本が大リーグ入りするために退団を申し入れ、返事待ちと報じたことから、関西のスポーツ紙は連日1面トップで山本の動向や関係者の証言などを報じる騒ぎになった。

 これらの報道によれば、山本はハワイ・マウイキャンプやオフのバカンスなどで何度も渡米するうち、ドジャースの極東担当スカウト、イチロウ前原氏ら多くの知人ができ、「野球の本場で一度投げてみたい」の思いが募っていったといわれる。

「大リーグでやりたいのは個人の夢」

 だが、野球協約68条(保有の効力)により、大リーグ入りするには、阪神が米球団とトレードを行うか、山本が自由契約を公示されない限り、実現は難しかった。阪神の岡崎義人球団代表も12月22日、山本と2時間半にわたって話し合い、「来季も戦力として必要」と慰留に努めた。

 これに対して、山本も「大リーグでやりたいのは個人の夢。でも、タイガースで13年やってきて、人に負けないぐらいタイガースを愛している」と揺れる胸中を吐露した。

 同25日に30%アップの年俸4300万円を提示されると、「気持ちを整理して、次回にサインしたい」と条件面で合意し、阪神残留が決まった。ドジャースとはすでに年俸はもとより、背番号も「25」に決まっていたともいわれるが、まだFA制度もなく、夢を叶えるには時代が早過ぎたと言わざるを得ない。

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