なぜ「ルフィ」はフィリピンの収容所でやりたい放題だったのか…背景にある「公務員の問題」をマニラ在住歴10年の記者が解説

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 フィリピンの収容施設で、特殊詐欺や強盗の差配をしていた「ルフィ」こと渡辺優樹容疑者(38)。彼らは職員に賄賂を払うことで、携帯電話ばかりでなく、タバコ、酒、麻薬も自由に入手できる環境にあった。ノンフィクションライター・水谷竹秀氏が「カネを払えば何でもあり」な収容所の実態を解説する。

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アポなしで取材が可能

 私はフィリピンで2004年から10年以上、邦字紙「日刊まにら新聞」の記者として働いていた。その間、担当していたのが入国管理局だった。日本の警察に手配され、高跳びした逃亡犯がフィリピン当局に拘束されるたびに、いまニュースで連日取り上げられている「ビクータン収容所」へ面会に通っていた。

 日本の警察署ではジャーナリストが留置所で容疑者に面会することはできないが、フィリピンの収容所では簡単である。アポも必要ない。弁護士でなくても、職員を通じて該当の日本人容疑者を呼び出せば、面会所に通される。

 アクリル板越しではなく、鉄格子を介して向き合う。私は月に1度は施設に通い、仲良くなった日本人収容者にタバコなどを差し入れもしていた。収容されている日本人は常にだいた10人前後で、刺青が背中に彫り込まれていたり、小指が欠損している収容者も珍しくなかった。

“新人”が入ると届くメッセージ

 当時は、国籍別に部屋が分かれており、日本人部屋のドアには日の丸の国旗が貼り付けられていた。食事は自炊で、「ご飯を炊く係」などの役割分担がある。彼らが作った「トンカツ御前」がテーブルに並んでいたのを見せてもらったことがあるが、キャベツの千切りもきちんと添えられ、ある逃亡犯は「芸が細かい」と感動していた。

 そうして通い続けるうち、長年収容されている「ボス格」の日本人男性と仲良くなり、いつしか、「新しい人が入りました」というメッセージが私の携帯電話に届くようになった。午前4時ごろ、「水谷さん、今新しい人が来たから、電話代わってあげるよ」と電話がかかってきたこともある。

 収容者が携帯電話を持てるフィリピンの入管施設では、これが「常識」なのである。収容者たちは面会時に、外部の家族や友人から金銭を受け取り、あるいは職員の口座を通じて日本からの送金を受け取る。その一部を施設の職員に渡し、携帯電話の使用を認めてもらっている。

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