カリスマ「豊田章男」社長交代の衝撃 “EV劣勢”と資源高でトヨタは「国内生産300万台」を死守できるか

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出遅れた「EV戦略」

 そんななか、バトンを渡された佐藤次期社長の重圧はかなりのものと見られている。

「部下に厳しく接することで知られる佐藤氏には“リーダーシップの発揮”面などで期待がかかります。一方で章男社長との意思疎通が密なタイプとされ、社長就任後も会長となった章男氏に逐一、報告・相談すると見られている。つまり意思決定のメカニズムはこれまでと変わらず、章男氏が“院政”を敷く形になるのでは……と社内の一部では囁かれています」(井上氏)

 しかし今後、経営責任を問われるのは佐藤新社長であり、その「最初の試金石」になると指摘されるのが、世界的に普及の動きが加速する電気自動車(EV)への対応だ。

「米テスラや中国、欧米メーカーに比べ、トヨタが現状、EV戦略で出遅れているのは否めません。トヨタの場合、EVだけでなく、ハイブリッド車(HV)や水素で走る燃料電池車(FCV)も含めた“全方位”で開発を進める独自路線を取っている。その戦略の違いも影響して、EV市場でのトヨタの覇権について懐疑的に見る専門家は少なくありません。このEV戦略のつまずきが、章男社長がかつて“石にかじりついてでも守る”と表現した『国内生産300万台』の死守に影響を与える可能性があります」(井上氏)

 コロナ禍に見舞われた20年以降、トヨタが雇用や技術を守る目安とした「国内生産300万台」の目標は2年連続で割り込み、経済界を中心に動揺が広がった。EV戦略での巻き返しも含め、新生トヨタの“次なる一手”に注目が集まる。

デイリー新潮編集部

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