「ロシアは負けない」発言の森喜朗氏に、防衛大名誉教授が言いたいこと

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森喜朗の蜃気楼

 Twitterでは《老兵は消え去るのみ》、《ロシアの侵略戦争は、言い訳のできない惨虐な戦争犯罪は明白》、《ウクライナ民間人に思いを馳せたことはあるんだろうか》──という具合だ(註:いずれも原文ママ)。

 防衛大学名誉教授の佐瀬昌盛氏は、東京大学大学院で国際関係論を学び、ドイツの国立ベルリン自由大学に留学するなど、東西冷戦研究の第一人者として知られる。

 1974年から2000年まで防衛大学校の教授を務め、2007年には集団的自衛権に関する憲法の見直しを検討すべく、当時首相だった安倍晋三氏(1954〜2022)の私的諮問機関(註4)の有識者委員も務めた。

 佐瀨氏は「森喜朗さんのお名前は『もり・よしろう』と読みますが、一部のメディアなどでは『しんきろう』と呼ばれています」と言う。

「ウクライナ戦争を巡る国際情勢を鑑みれば、森さんの『ロシアは負けない』との発言は非現実的であり、まさに“蜃気楼”を見ているかのようです。多くの国民が『どうしてそこまでプーチンに肩入れするのか?』と疑問に思っているでしょうし、私も同じ思いです」

ドイツの大転換

 首相だった森氏は失言や問題発言が多く、政権は約1年しか保たなかった。

「森首相の唯一とも言える成果がイルクーツク声明でした。森さんは当時の記憶が忘れられないのかもしれません。とはいえ、プーチン氏は元KGBの職員。諜報活動のプロであり、利用価値のある人を籠絡することなど朝飯前です。森さんは今でも、プーチン氏の罠に引っかかっているのではないでしょうか」(同・佐瀨氏)

 森氏は記念レセプションのあいさつで、《日本がやっぱり大事な役割をしなきゃならん》とも訴えた。

 では、もし森氏の助言に従ったら、どんなことが起きるのだろうか。例えば、日本がNATO(北大西洋条約機構)加盟国と距離を置き、ロシアとのパイプを構築するという“独自外交”を行ったら、どんな結果が待っているのか──?

「日本外交は世界の笑いものになるでしょう。ここで思い出すべきは、ドイツがウクライナに戦車『レオパルト2』の供与を決めたことです。日本はヨーロッパから離れているので仕方がないところがありますが、これが世界史レベルの、ドイツ外交政策における大転換であることは、あまり日本では解説されていないようです」(同・佐瀨氏)

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