二人合わせて歯が3本の「きんさん・ぎんさん」はなぜ長生きできた? 健康長寿の新常識は「舌が命」

ドクター新潮 ライフ

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「歯の整理」

 だったら、歯周病パンデミックに陥る直前に歯を抜けばいいのではないか、そうすれば、それまでの間は多くの歯で食などを楽しめるではないか――そう考える人もいるかもしれません。

 たしかに、歯周病は文字通り歯があるからこそ発生する病気なので、歯がなければ歯周病の問題は解決します。高齢になって充分にケアできない歯は抜いてしまえばいい。

 しかし、寝たきりになってから抜歯するのは至難の業です。抜歯は簡易な手術のようなものですから、歯医者に行けない状態になった高齢者の歯は、施設あるいは自宅に訪問して簡単に抜けるというものではありません。したがって、自立的な生活ができなくなる前、75歳くらいまでには残すことが困難になった歯は早めに抜いてしまう「歯の整理」が必要な時代を、私たちは迎えているのではないでしょうか。

 そうしたことを考えても、歯がない分を補う舌の健康を、私たちはより意識しなければならないと思うのです。

「いつまでも 行けると思うな 歯医者さん」

 歯と舌を総合的に捉えることこそが、人生100年時代の健康長寿法だと私は考えています。

 ぜひ、舌の大切さを再認識していただければと思います。

菊谷 武(きくたにたけし)
日本歯科大学教授。1963年生まれ。日本歯科大学歯学部卒業。歯科医。現在、同大学教授兼同大附属病院口腔リハビリテーション多摩クリニック院長を務める。専門は摂食嚥下リハビリテーション、老年歯科学。『図解 介護のための口腔ケア』『あなたの老いは舌から始まる』等の著書がある。

週刊新潮 2023年1月5・12日号掲載

特別読物「正月こそ大事『歯が命』には落とし穴が…『人生100年』健康長寿の新常識は『舌が命』!」より

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