二人合わせて歯が3本の「きんさん・ぎんさん」はなぜ長生きできた? 健康長寿の新常識は「舌が命」
きんさん、ぎんさんの歯は…
長寿姉妹として親しまれた「きんさん、ぎんさん」。100歳を超えてもなお、明るく快活に過ごし、そして私たちを和(なご)ませてくれたふたりの姿は、多くの人が目指す百寿者のひとつのモデルだと思います。
では、亡くなる間際まで元気に、自立的に生活し、健康長寿を地で行っていたふたりの歯の本数はどうだったのでしょうか。
きんさん0本、ぎんさん3本。
地元の歯医者さんから入れ歯を勧められたものの、「困っていないから結構です」と断ったそうです。ここから学ぶべきことは多いと思います。なぜ歯が全く、あるいはほとんどないきんさん、ぎんさんは、よく食べ、よく喋り、そしてよく生きることができたのか。おそらく、活発に動く舌がふたりの健康を支えていたのでしょう。それほど、舌は極めて重要な役割を果たしているのです。
0.8秒の神業
・食べものを迎えに行って口の中に取り込む。
・味や温度などを感知する。
・食べものを口の中で巧みに動かして咀嚼を助ける。
・かみ終わった食べものを取りまとめて、のどに送り込んで飲み込む。
これら一連の動きの中心は舌なのです。歯がなくても、舌が食べものを口蓋(こうがい)(上あご)にこすりつけて潰したり、舌と歯ぐきでかみ砕いたりする。だからこそ、歯がなくてもきんさん、ぎんさんは元気だったと考えられます。
また、舌はとても鋭敏な感覚を持つ器官でもあります。ゴマ粒ひとつを選り分けられ、髪の毛が1本、口の中に入っただけでそれを感じ取る。
さらに嚥下について詳しく説明すると、実は私たちは、食べものを飲み込む瞬間に0.8秒だけ息を止めています。その間に気管を閉じて食道を開くという神業的な作業を行い、「呼吸」と「嚥下」を切り替えているのです。
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