23歳でデビューした作家・荒木あかねの創作の相棒は、ボロボロのタオルケット? 名前をつけるほど溺愛する理由とは
名前をつけたタオルケット
2022年『此の世の果ての殺人』で第68回江戸川乱歩賞を受賞し、同賞の史上最年少受賞者として脚光を浴びた作家の荒木あかねさん。23歳でデビューした彼女にとっての、創作の相棒ともいえる大切な品とは。
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中学3年生の夏に作家を志してからというもの、学校や仕事の合間を縫ってミステリー小説を書き続け、昨年の5月、念願かなって江戸川乱歩賞を受賞した。それからの半年間はとても慌ただしく、刺激的だった。8月の刊行に向けて大急ぎで受賞作を改稿したり、受賞第1作となる短編小説を四苦八苦しながら執筆したりと、目まぐるしい変化に翻弄されていた。ありがたいことに忙しい日々は今も続いていて、こうして生まれて初めてコラムを書かせてもらう機会も得た。
昔から夜更かしが大の苦手で、仕事の締め切りが差し迫っていても、なるべく睡眠時間は削らないよう心がけている。入眠直前、わたしはお気に入りのタオルケットをなでながら、頭の中で作り上げた登場人物たちを動かしたり、ストーリーの展開を考えたりするのだが、そうやってうとうとしつつ空想にふけるひとときが一日の中で最も幸せな時間であり、わたしの小説のアイデアの源でもある。
幼い頃から愛着があるぬいぐるみや玩具を捨てられない、という話はしばしば聞く。わたしにとっては、眠りにつくまでなでているこのタオルケットがまさにそれで、いくつになっても手放すことができない。タオルケットの名前は「じゃりじゃり」という(タオルケットに名前をつける人を初めて見た、とドン引きされることがままある)。「じゃりじゃり」としか言いようのない手触りをしているから、じゃりじゃり。どれくらい気に入っているかというと、もしも火災が発生して大事なものを一つしか持ち出せないとしたら、スマホも財布も無視して真っ先にじゃりじゃりを選ぶくらい。わたしの健やかな睡眠をずっとサポートし続けてくれている、大切な相棒だ。
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