今からでも見たい冬ドラマ三選 「ブラッシュアップライフ」が異色のタイムリープものである理由

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「罠の戦争」(フジテレビ系、月曜22時)

 主演の草なぎ剛(48)の演技を観ていると、故・高倉健さんが高く評価し、演出家で劇作家の故・つかこうへい氏が「あいつは天才」と手放しで誉めていたことが、あらためて納得できる。

 草なぎが演じているのは鷲津亨。内閣府特命相・犬飼孝介(本田博太郎[71])の公設第1秘書である。犬飼への復讐を水面下で進めているものの、表面上は従順を装っている。

 鷲津が復讐を開始したのは1人息子・泰生(白鳥晴都[15])の大ケガが発端。何者かによって歩道橋から突き落とされたのだが、犬飼から「事故ということにしろ」と命じられた。言うことを聞かなかったら、事実無根の横領罪で告発するという。虫けら扱いだ。これでは温厚な鷲津もキレる。

 草なぎは難しい演技を次々とこなしている。例えば第1話の後半で私設秘書・蛍原梨恵(小野花梨[24])と見習い秘書の蛯沢眞人(杉野遥亮[27])に、仲間になってもらった場面だ。

「力を貸してくれないか。2人には迷惑を掛けないようにするから」
(鷲津)

 鷲津の復讐に加担したら、蛍原と蛯沢には大きなリスクが伴う。それでも2人が鷲津の味方になるのは自然なことだと観る側に思わせなくてはならない。

 鷲津は哀しい目をしながら、訥々とした口振りで協力を頼んだ。短い言葉だったが、鷲津の思いを理解した2人は願いに応じる。観る側も3人の結束の瞬間を違和感なく眺められた。草なぎが鷲津の篤実な内面まで表現できていたからだ。

 演じる役柄の内面まで表現するのは、表面上の喜怒哀楽を演じるのとは別次元。難しいだろう。草なぎはそれが出来ることなどから、健さん、つか氏に買われた。

 草なぎはメソッド演技法を体得しているか、あるいは意識しないまま、それに近い演技が出来ているのではないか。この演技法は自分と役柄の人格や深層心理を完全に同化させてしまう高度なテクニックで、日本ではオダギリジョー(46)や古舘寛治(54)たちがこれを米国で学んだ。

 ストーリーは劇画チックで、テンポよく進んでいる。既に虻川が鷲津の仕掛けた罠によって犬飼事務所から放り出された。ちょっと抜けている犬飼も鷲津の敵ではないだろう。

 泰生を突き落とした犯人は犬飼の有力支援者の関係者か、それとも政界の大物の子息なのか。事件の背後には何が隠されているのだろう。

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