今からでも見たい冬ドラマ三選 「ブラッシュアップライフ」が異色のタイムリープものである理由
プライム帯(午後7時~同11時)に15本ある冬ドラマの序盤が過ぎようとしている。すべて観るのは少々難しいはず。そこで、絶対見逃したくない3本を紹介したい。これから観ても間に合う。
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「ブラッシュアップライフ」(日本テレビ、日曜22時30分)
安藤サクラ(36)が主演のタイムリープもの。脚本は2017年の「架空OL日記」(日本テレビ)で向田邦子賞を獲ったバカリズム(47)が書いている。
ドラマ、映画のタイムリープものの主人公は大きな目標を成し遂げようとすることが多い。だが、安藤の演じる主人公・近藤麻美は異なる。目標がみみっちい。そこが面白い。
北熊谷市役所職員だった麻美は33歳で交通事故死した。死後の世界の案内人(バカリズム)から告げられた来世は「グアテマラ南東部のオオアリクイ」。
それは避けたかった麻美は、同じ自分として2周目の人生を送る道を選ぶ。1周目の人生より徳を積むと、来世も人間になれる確率が高くなると案内人から説明されたからだ。立派な行いをすると、来世は動物にならなくて済むということである。
1周目も2周目も麻美の日常は極めてリアル。タイムリープなど「ありえない話」を土台にして作品をつくる場合、それ以外の身近な部分は真実味を持たせないと、全体的に「ありえない話」で終わってしまう。それが避けられている。
例えば麻美は人生の1周目も2周目も小中学校からの友人・門倉夏希(夏帆[31])、同じく米川美穂(木南晴夏[37])と、中学で同級生だった丸山美佐(野呂佳代[39])のあだ名が「みさごん」から「ごんみさ」、「ごんちゃん」「ちゃんごん」に変わっていったことを振り返った。レストランでの美穂の誕生会でのことだった。
こんな会話、99%のドラマは省く。くだらないからだ。しかし、くだらない会話をわざわざ盛り込むことによってリアリティが生まれた。しかも笑えた。
考えてみると、現実に生きる人たちだって、友人との会話の大半はどうでもいいこと。いくつになっても同じ。政治や人生哲学がテーマになることはほとんどない。家庭問題や恋愛の話ばかりする人も滅多にいない。
2周目の人生で起きた中学の同級生・森山玲奈(黒木華[32])の不倫問題も真実味があった。そのうえ愉快痛快だった。
麻美、夏希、美穂がレストランにいた時、たまたま出くわした玲奈は3人にカレの写真を見せた。その男は2周目人生で薬剤師になった麻美の先輩・宮岡徹(野間口徹[49])で、既婚者だった。それを玲奈は知らない。
3人は話し合いの末、玲奈をカラオケボックスに呼び出し、不倫であることを伝えることにする。大人しく真面目そうな玲奈がショックを受けると予想し、どうフォローするかまで念入りに考えた。わざわざシミュレーションまでした。
バカバカしいが、こういうことって、実際にある。人間はさほどカッコイイものではなく、その行動は滑稽だ。麻美たちは最後にみんなで中島みゆき(70)の「ファイト!」を歌うことまで決めた。
ところが、麻美から事実を伝えられた玲奈はちっとも落ち込まず、速攻で宮岡に電話を入れ、語気を荒らげてまくし立てた。
「もしもし。『どうしたの』じゃねーよ。テメ、結婚してんじやねーかよ。『はぁ』じゃねーよ。すっとぼけんなよ、ネタは挙がってんだよ。『落ち着け』じゃねーよ。バーカ! テメ、よくもアタシの大事な時間を潰してくれたな!」(玲奈)
玲奈の豹変ぶりと勇ましさは男性目線だと「本当かよ?」となるかも知れないが、女性に聞くと「この状況だと、ぜんぜん不思議ではない」そうだ。
2周目の人生で麻美は玲奈の不倫にピリオドを打たせただけでなく、中学時代の教師・三田哲夫(鈴木浩介[48])の痴漢が濡れ衣であることを証明した。祖父・原田信博(綾田俊樹[72])のクスリの飲み合わせが悪いことにも気づき、余命を伸ばした。
2周目の人生も麻美は懲りずに33歳で交通事故死するが、徳は積んだはず。ところが、今度の来世は「インド太平洋のニジョウサバ」。やはり人間ではなかった。悄然とする麻美の姿がおかしかった。
麻美は3周目の人生にトライすることに。今度は日本テレビに入社するという。
ほかに志田未来(29)、三浦透子(26)、染谷将太(30)らが助演。よくぞ実力派ばかりが集まったものである。
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