「大人になるにつれ時の流れを早く感じる」 物理学者・森亮が残りの人生の「体感寿命」を計算すると驚きの結果に
「最近時の流れ、はやくない?」
東京大学物性研究所附属極限コヒーレント光科学研究センターで助教を務める物性物理学者の森亮さん。「大人になるにつれ時の流れを早く感じる」という命題にさまざまな数式を駆使して向き合い、深夜のテンションで編み出した「相対的体感寿命」なる概念とは?
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30代に差し掛かった頃、自室にてふと思った。
「最近時の流れ、はやくない?」
思えばここのところ「今年はあっという間だったな、記録更新だわ」と毎年つぶやいている。毎年というか、月単位で毎回記録更新している。
楽しい時間はあっという間に流れるといわれているが、そうではない。むしろ逆で、なんだか生活は腐っているし辛い事の方が多い。その感じでいくと、辛い時間は長く感じられるはずだが、体感速度はグングンと上がっている。そして何より思い出の分解能が粗い。粗いも粗い、死ぬほど粗い。世間では4Kが普及し、次は8Kだ16Kだといわれているのに、自分の1年間の思い出の解像度の低さといったらほぼドット絵。
80歳までの体感時間を見積もってみると…
これはどういうことなんだ?と、研究そっちのけで(というか現実逃避で)自室にあったホワイトボードの前で考え始めた。「研究もはかどるかもしれないし、ていうか部屋にホワイトボードあるとなんかカッコいいフインキ出るし」と馬鹿丸出しの想いで購入したが、なぜかマナティとジュゴンの違いの概要図が描き散らされて以来数カ月以上放置されていた大きな白い板。ついに活用する時がきたようだ。デカデカと書き殴られた「まるいはマナティ」という覚え方の語呂(マナティは尻尾が丸い)を消し去って、考えを書き出した。
超常現象説や陰謀論など一通り可能性を書き連ねた中で、「年齢に対して1年間という長さが相対的に短くなる為、時が加速しているように感じる」という謎の仮説に心引かれた。
1歳の子供からすると、次の1年間は自分の生きてきた全時間と同程度の長さや新鮮さ。60歳の大人からすると、次の1年間は自分の生きてきた全時間と比べると1/60。つまり、1歳の子供が体感する1年間と比べると、n歳の人にとっては、同じ1年でも1/nくらいにモロモロと薄まるのでは……?という感じの説である(注)。
めちゃくちゃ粗いしツッコミどころはあるけど、とりあえず一生分を合計したらどんなもんかな、と思い、1歳での1年間を基準として、80歳までの体感時間をざっくり見積もってみた。
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