ウクライナ軍に供与される「レオパルト2」100両 対ロシア「T−90」を想定した驚きの設計思想とは

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エイブラムスの欠点

 一方、1993年に生産が始まったチャレンジャー2は第3・5世代。70年代後半から80年代にかけて開発されたレオパルト2とエイブラムスは、当初こそ第3世代だったが、今では改良を加えた第3・5世代が主流だ。

 ロシアも第3・5世代の戦車を保有しているが、ウクライナ戦争には投入されていないようだ。

「ロシアではT−14が第3・5世代です。チャレンジャー2、レオパルト2、エイブラムスの供与が決まったのですから、ロシアは本来ならT−14を戦場に投入する必要があります。ところが、生産量が少ない虎の子の戦車を破壊されたり鹵獲されるのを恐れ、投入できないと見られています」(同・記者)

 世代の違いは決定的だ。これら3種類の戦車は基本性能でT−90を圧倒している。だが、全ての戦車がウクライナの最前線で活躍できるかと言えば、そうでもないという。

「チャレンジャー2とエイブラムスをウクライナの戦車兵が乗りこなすのは簡単ではなく、訓練が必要です。おまけにエイブラムスは、ディーゼルエンジンではなくガスタービンで動きます。世界で最も強い戦車と高く評価されているとはいえ、整備や修理にも特別な技術や資材が必要です。ウクライナ軍が運用できるようになるには、年単位の時間が必要という悲観的な声さえあります」(同・記者)

レオパルト2の長所

 チャレンジャー2は砲弾がNATO軍の標準ではないことが懸念材料の1つと言われている。補給がうまくいくか心配されているのだ。

 こうしたことから、ウクライナ軍にとっては、レオパルト2が最も使いやすいのだという。軍事評論家の菊池征男氏は「ゼレンスキー大統領が切望するのは当然でしょう」と指摘する。

「もちろんレオパルト2も、ウクライナの戦車兵が乗りこなすには訓練が必要です。とはいえ、チャレンジャー2やエイブラムスほどかけ離れた戦車ではありません。レオパルト2にはT−72やT−90と似たところも多く、訓練の期間は短くて済むはずです」

 世界の軍事関係者がレオパルト2を注視している理由の一つに、設計思想があるという。何しろ「打倒T−90」を目的に開発されたのだ。

「1つ目の注目点は、レオパルト2のスピードです。T−90の最高速度は65キロですが、レオパルト2は68キロまで出せます。少しでも早くT−90の射程圏内に入り、砲撃すると全力で後退するという戦術を実現するため、最高速度を上げました」(同・菊池氏)

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