ウクライナ軍に供与される「レオパルト2」100両 対ロシア「T−90」を想定した驚きの設計思想とは

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故障の多いロシア戦車

 オランダの軍事サイトORYXは、ウクライナ戦争の戦況を伝える写真をSNSなどで収集し、ロシア軍とウクライナ軍の戦果を分析している。

 1月26日にサイトを閲覧すると、ロシア軍の戦車部隊が受けた被害が以下のように報告されていた。

《ロシア軍の戦車1646両のうち、破壊されたものは967両、損害を受けたものは75両、乗り捨てられたものは59両、鹵獲されたものは545両》

 鹵獲(ろかく)とは「戦場で勝利した部隊が、敗れた敵から兵器などを獲得すること」を意味する。

「少なからぬ戦車が現在も鹵獲されているという戦況は、ウクライナ軍の大善戦とロシア軍の軍律崩壊を象徴していると考えられ、世界中のメディアが詳報を続けてきました。とはいえ、T−72もT−90も結局はロシア製です。実際に使っているウクライナ軍からは『故障が多すぎる』という悲鳴が上がっていました」(同・記者)

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、緒戦時から「NATO(北大西洋条約機構)軍の戦車を供与してほしい」と訴え続けてきた。

「しかし、アメリカを筆頭とするNATO加盟国は慎重でした。ウクライナ軍が勝ちすぎるとロシアが核兵器を使うかもしれない、という懸念があったからです」(同・記者)

戦車の世代

 ところが、今年に入って流れが変わる。1月14日にイギリスは、戦車「チャレンジャー2」を14両、ウクライナに供与すると発表。これに他のNATO加盟国が追随した。

「ドイツも最初、『レオパルト2』を14両、ウクライナに供与すると発表しました。ヨーロッパのNATO加盟国は、2000両以上のレオパルト2を保有しています。ゼレンスキー大統領は『勝利するには300両が必要』と訴えており、複数の加盟国で約100両を供与する方針です」(同・記者)

 アメリカも自国の戦車「エイブラムス」を31両、ウクライナに供与すると発表した。これでウクライナ軍は、イギリスのチャレンジャー2、ドイツのレオパルト2、そしてアメリカのエイブラムスという3種類の戦車を手に入れることになった。

 しかし、ウクライナ軍が切望しているのはレオパルト2であり、チャレンジャー2とエイブラムスは複数の問題を抱えているという。その点に触れる前に、まずは性能を比較しておこう。

 戦車には「世代」がある。1973年に生産が始まったT−72は第2世代、1992年に生産が始まったT−90は第3世代だ。

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