「関東連続強盗事件」の知られざる裏側 実在する“叩き”専用「名簿」「マニュアル」で狙われる高齢者の“丸裸”個人情報

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 関東圏を中心に相次ぐ連続強盗事件の背景が徐々に明らかになり、世間に大きな衝撃を与えている。しかし、いまだ判然としないのが犯行グループが強盗に入る対象をどうやって選んだのか、だ。現在、捜査関係者がターゲットの選定に使われたと見るのが、特殊な「名簿」の存在だ。「年々、精度が上がっている」という“闇の名簿”の実態を当事者が証言する。

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 すでに関東地方では1月9日から19日までのわずか10日余りで、計8件の強盗・窃盗事件が発生。19日に都内狛江市の自宅で住人の大塩衣与さん(90)が殺害された事件では、千葉で起きた別の強盗致傷事件で逮捕された自衛官・中桐海知容疑者(23)のスマホに、大塩さん宅の住所情報などが記録されていたことが分かっている。

「大塩さんは両手首を結束バンドで縛られ、左腕は骨折し、顔から血を流した状態で発見されました。事件当日、大塩さん宅付近で確認され、翌日に足立区内で押収されたレンタカーは昨年12月、中野区で起きた強盗事件に関与した永田陸人容疑者(21)が使用していたものだった。同レンタカーから見つかったスマホにも〈狛江市〉や〈欠員が出たら連絡する〉などのメッセージのやり取りが残されていました」(全国紙警視庁担当記者)

 そのため犯人グループは事前に情報を共有しつつ、実行メンバーを入れ替えながら組織的に犯行を繰り返していたと見られている。

「一連の事件には“3人組”“住人の在宅時に押し入る”“結束バンドや粘着テープを使用”“ハンマーを携帯”など類似の特徴も少なくありません。被害に遭った住人の多くが高齢者である一方、犯人グループは20代の若者たちを中心に構成。闇サイトの“報酬100万~200万、叩き(強盗)の仕事”といった募集に応募して集まり、互いに面識はなかったとされます」(同)

“叩き”名簿の存在

 犯行グループによる侵入先の選定には「“一軒家に住む裕福な高齢者宅”などをリスト化した名簿をもとにした可能性が高い」(捜査関係者)という。

「メディアでは“名簿屋”なんて呼ばれますが、業界では“武器屋”と呼ばれることが多い。仕事=戦うためのツールを用意するという意味。俺の知ってる武器屋の多くは20代や30代前半までで、名簿専業でやっている人間はほとんどいない。俺たちのグループも情報商材の販売や仮想通貨など、いくつかある“事業”の一つとして名簿を扱っているに過ぎない」

 こう話すのは、実際に闇サイトなどに出回る名簿を販売しているXだ。Xによれば、「叩き用の名簿」というものが存在するという。

「要は一軒家に住む高齢者世帯などを主にリストアップしたもの。なぜ高齢者なのかといえば、タンス預金しているケースが多く、押し入っても反撃される恐れもないので、手堅く叩ける。“叩き名簿”はリストアップされている人数や精度にもよるが、だいたい50万~200万円程度の値で取り引きされている」(X)

 全国を網羅した数千人を超える名簿も存在するが、人数が多くなるほど「情報の精度に欠ける」傾向があり、値は安くなる。他にも「地域限定」と呼ばれる都道府県単位のものなど、用途によって名簿のバリエーションは分かれるという。名簿の中身や作成法など、核心部分をXに訊ねた。

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