「『明日カノ』を読んで来た子が初回でシャンパンタワーを入れてくれて…」 現役ホストも驚いたブームの余波

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「ラストソングを歌わせてあげたい」

 いまも汝のエース(※担当ホストに最も金を使う客)であるその女性は、自ら明日カノを読んでホストクラブに来たと汝に明かしたという。「初めてでいきなりシャンパンタワーを入れてくれた」と聞いて、いかにも漫画を読んで来た客だなと感じた。いわく、

「ラストソング(※その日のナンバーワンホストが歌うことができる閉店間際の歌)をどうしても歌わせてあげたい。だから、わたしが(シャンパンを)入れる」

 となったそう。明日カノ本編でも同様のエピソードが出てくるから、おそらくホストクラブではそうするのが当たり前と思ってシャンパンを入れたのではないか。

「でも、僕まだ成人してないからお酒飲めないんで(笑)。だから、シャンパンタワーじゃなくて『コーラ』でタワーしたんです。でも、ちゃんと初・高級シャンパンとの写真は撮りましたよ」

 店に来た当時、女性はガールズバー勤務だった。が、この夜を機に汝の客となった彼女は、彼を応援するために、現在は風俗店に勤めているそうだ。

「風俗に行くことにしたという話を聞いたとき、女の子やヘルプキャストがいる席で大泣きしてしまったんです。だって、彼女の運命を変えてしまったわけですからね。苦しさで耐えられなくなり……」

 と、今でも汝は涙ぐむ。だが、それはそれとして、その女性は最初から風俗業界に行くか迷っていたのではないかと私は思う。まして明日カノを読んでいるのだからホストに通う女性の属性がどのようなものなのか知っていたはずだし、漫画でなくても、今はSNSを通じて業界の実態を窺うことができるからだ。風俗で働くにあたっての「一押し」が欲しかったところに、明日カノや汝があったのではないか。

 汝の取材後にたまたま話す機会のあった業界歴20年のベテランホストは「昔のホストクラブは『お金を持っている』客が来る場所だったが、今では『お金を作って来る』場所になっている」と言っていた。

 それはホストクラブのハードルが下がり、より身近になったとも言い換えられるかもしれない。良し悪しは別として、「明日カノ」ブームがそこにひと役かったことは間違いないだろう。

酒井あゆみ(さかい・あゆみ)
福島県生まれ。上京後、18歳で夜の世界に入り、様々な業種を経験。23歳で引退し、作家に。近著に『東京女子サバイバル・ライフ 大不況を生き延びる女たち』(コスミック出版)。主な著作に『売る男、買う女』(新潮社)、『東電OL禁断の25時』(ザマサダ)など。Twitter:@muchiuna

デイリー新潮編集部

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