「『明日カノ』を読んで来た子が初回でシャンパンタワーを入れてくれて…」 現役ホストも驚いたブームの余波

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 をのひなお氏の漫画「明日、私は誰かのカノジョ」(明日カノ)が、大ブームを巻き起こしている。小学館から刊行されたコミックスは累計300万部を突破し昨年テレビドラマ化したほか、壁面広告が新宿、池袋、渋谷など主要な駅をジャックした際には聖地巡礼者も続出した。『売る男、買う女』(新潮社)などの著書があるノンフィクション作家の酒井あゆみ氏が、そんなブームの余波を取材した。

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“レンタル彼女”業にいそしむ主人公・雪を筆頭に、パパ活女子や風俗嬢らをオムニバス形式で描く明日カノは、ひと言でいえば「売る女」たちの物語だ。女性好みの画、そしてなにより“闇・病み・沼”な精神状態の時に出る登場人物たちの言葉のセンスが、おなじ「売る女」たちに受けたのではと想像する。

 新宿・歌舞伎町の大久保公園が「立ちんぼ公園」となっていると報じられたが、パパ活、トー横の家出少女など、風俗嬢やキャバクラ嬢ではなくても「売る女」が増えている時代である。だから読者人口がそもそも多い。そんな彼女たちにとっては、作中に登場する、

「寂しい」
「消えたい」
「なるべく早く死にたい」
「幸福は麻薬」
「この衝動をなんか抑えたい」

 といった刹那的なセリフは自らを投影しやすいのだろう。

 明日カノの第四章ではホストクラブ狂になる「萌」のエピソードが描かれる。とくに人気がある章らしく、以前から「『明日カノ』ブームでホストクラブが大にぎわい」という記事が様々なメディアで散見された。そんなに単純な話ではないといぶかしんでいたが、実際に「明日カノ」を機に初めてホストクラブに来た女性を顧客に持つというホストがいると聞き、話を聞いてみた。

現れたのは19歳の新人ホスト

 彼が勤務するのは「TOP DANDY 1st」。母体のトップダンディーはいわずとしれたホスト業界の大グループで、歌舞伎町にとどまらず地方にも店舗を増やし続けているほか、ホストクラブだけでなく飲食店やホテルなど業種も拡大している。その会長と十数年前にとあるお会いした縁で、今回の取材につながった。ホストクラブがこうした取材に協力してくれることはあまりない。

 煌びやかかつスタイリッシュなTOP DANDY 1stの店内に案内された私のもとにやってきたホストは、汝(なんじ)という源氏名の男の子だった。髪こそ金髪であるものの、見た目はあまりにも「フツー」なので驚いた。歳を聞けば一週間前に19歳になったばかりだという。

 汝はクラブに入って1ヶ月で「新人賞」「新人売上ナンバーワン」を確立した、期待の新人であるらしい。14歳の時にテレビで有名ホストを知り、この道を志したという。

 女手ひとつで彼を育てた検査技師の母は大学進学を条件に上京を許したものの、汝は2ヶ月もしないうちに大学を辞めた。

「夢に見ていたホストになるためにホスト店に入ったんで、大学に行ってる場合じゃない、って……。僕が居るお店は3ヶ月の研修、新人期間は1ヶ月30万の売り上げを3ヶ月やらないと即クビですから」

 新人キャストの汝がすぐにトップクラスになれたのは、例の「明日カノ」読者の女性のおかげだ。彼女と出会ったのは、ホストデビューからわずか1週間でのことだった。

 今やホスト、客にも明日カノ読者は多いと聞く。だが感想を汝に尋ねるも、

「リアルですよね……」

 と多くは語らず。決してホスト業界を良く描く内容ではないから、作品そのものにはあまり触れられたくないのだろう。

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