同僚がストーカーに豹変 暴走のきっかけとなった「女性からのメール」とは 危険度をどう見分けるか専門家が解説

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 福岡市で起きたストーカーによる女性殺害事件を受け、メディアの多くで「何とか防げなかったのか」という議論が行われている。悲劇を繰り返さないための法改正等については常に検討していくべきなのは言うまでもない。

 一方で、警察など公権力に万全を期待するのは無理だろう。ストーカーを次々逮捕、拘束することは難しいし、被害に遭いそうな人を24時間体制で警護することは不可能だ。

 また、一口にストーカーといってもその危険度はさまざま。メールや電話がメインの場合もあれば、今回のように凶行に至る場合もある。多くの場合、警察が介入した時点で諦めるともいわれているだけに、対策は実に難しい。

 ストーカー問題やDVなどの相談に対処するNPO法人「ヒューマニティ」の理事長、小早川明子氏の著書『「ストーカー」は何を考えているか』には、その危険度の見分け方についての解説が書かれている。

 危険度を判断するには「行動レベル」「心理レベル」、二つのレベルでの判断が求められる、と小早川氏は述べている。実際のケースを見ながら、今回は行動レベルでの判断について見ていこう(以下、『「ストーカー」は何を考えているか』第4章 危険度をどう見分けるか――行動レベルと心理レベルの3段階 より)【前後編の前編/後編を読む

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 ストーキング行為によって起きている被害や危険がどの程度か、客観的に見るための方法があります(下の図を参照)。

 ピラミッド型の三角形を3分割した下の部分が(1)マナー違反レベル、中間が(2)不法行為(民事訴訟相当)レベル、上の三角形は(3)刑事事件レベル。まず被害がどのレベルにあるか、起きた事実をもとに被害者と一緒に確認していきます。

 例えば、いくら拒否しても「愛している」「付き合いたい」「離れたくない」など追いすがるようなメールが送られてくる、贈り物や花束が届けられるというのは(1)。

 メールの文言が「死ぬ」「誠意を見せろ」など相手に恐怖を与えるものになり、会社で待ち伏せされるような事態は経済的・精神的実損を伴うので(2)の段階です。「訴える」と言われたらさっさと訴訟レベルで応じればよいし、もし不法行為がストーカー規制法に抵触するものなら行政処分である警告を発令してもらいます。

 その警告が効かない場合はすでに(3)のレベルで、告訴すれば逮捕も可能です。傷害や強姦、名誉毀損などがあれば、規制法とは別の刑事の罪状で処罰を願い出ることができます。

 ある相談者(50代女性)は趣味の旅行サークルで知り合った年下の男性から交際を申し込まれ婉曲に断ったのですが、しつこく旅行に誘われた。これは(1)の段階です。

 女性は「一人旅が好きだから」と再度断ったものの、あるとき長距離列車に乗る話をしたところ、その日、男性が後ろの座席に座っていた。尾行による待ち伏せで、事態が(2)の段階に進んだことになります。

 彼女は体を硬くして無視していましたが、男性は隣の席に移動してきて手を握った。「近寄らないで」と必死で拒むと、「宣戦布告ですか」と言う。無理に体に触れるのは暴行罪に相当するし、精神的恐怖を与える言葉を使っている。いよいよ(3)の段階です。

 この女性が警察で相談しても、背筋が寒くなるようなその恐怖に反応してくれる意識の高い警察官ばかりとはかぎりません。暴行罪どころか、「手を握られたぐらいで大げさな。だって知り合いなんでしょう」で片付けられてしまいかねないのが実情です。

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