巧妙化する「SNSいじめ」子どもを被害者にも加害者にもしない方法 証拠の残し方、フィルタリングの使い方は?
真っ先にすべきは「証拠の保存」
さらに、加工された顔写真は、クラスのほとんどが参加していたLINEグループで共有されていたため、いじめの加害者を罰するということも難しかった。私立の学校でクラス全員を処分するのは経営的にも難しいですからね。当初、親御さんが学校に相談してもなかなか取り合ってもらえず、「内密に」と言われたそうです。
〈LINEやTikTokによる、ネット上でのいじめが自殺未遂にまで発展してしまったこの女子生徒の例を見てもわかるように、テクノロジーの発達とともに現代のいじめは、「見えにくく」「全容の把握が難しく」なっている。
女子生徒の親から相談を受けた安川氏は、どんな対応をアドバイスしたのか?〉
まずは、子どもの異変に気付くことが重要ですが、ことがおきてしまった場合に真っ先にすべきなのは、「証拠を押さえる」ことです。メールやLINEであれば、誹謗中傷に当たる文面を見せてもらい、スマホのスクリーンショット機能を使って保存する。SNSの中には、一定の時間が経つと投稿が消えてしまうものもありますから、とにかくその場で保存することです。
〈学校だけが現場とは限らず、いじめの首謀者や加害者を特定しづらいネットいじめでは、証拠を残したところでどうなるものかという心配もある。しかし、誹謗中傷の証拠を残すことで、学校側を動かす「手段」を手に入れることができるのだという。〉
LINEの文面でも画像でも動画でも、証拠として残すことにより、「たかが子ども同士のネット上のやりとり」と思われていたものを、“事件”として取り上げてもらえる可能性が出てくるのです。
証拠を学校に提出
2022年10月にはプロバイダ責任制限法が改正され、ネット上の匿名攻撃者を特定する手続きが簡略化されました。法律はネットでの誹謗中傷を取り締まる方向に舵を切っています。最初に相談する先はやはり学校になりますが、犯罪になり得る事案の証拠があり、誰の発信なのかを特定する術がある以上、「ネットでの悪口でしょう」「気にしすぎでは?」といった生ぬるい対応に終始するわけにはいかなくなります。私がアドバイスした女子生徒の例でも、親御さんが集めた証拠を手に学校に訴えかけたことで、いじめの解消に向けての取り組みが始まりました。
子どもたちは、被害に該当する文面や画像、動画を特に親には隠そうとしますが、ネット上であってもこうした攻撃はれっきとした犯罪になることをしっかりと伝えて、証拠を集めましょう。ドライブレコーダーの普及であおり運転の検挙が増えたように、ネットいじめの証拠を残し、可視化することこそが、複雑化、巧妙化するネットいじめへの対応につながります。
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