痩せている人ほど早死に? カロリー摂取量増加で健康増進 老けないための「多様食」とは

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パンよりご飯がオススメな理由

 また、DVSにはご飯(米)や、パン、麺類は含まれていません。なぜなら、これらの主食は放っておいてもほとんどの人が食べるからです。そして、主食を食べすぎると、必然的におかずの量が減り、スコアは高くなりません。主食の量を抑え、おかずの量を増やす。これによって多様食が促進されるため、おかずをより意識してもらう意味もあってDVSに主食を含めていないのです。

 同様に考えると、DVSを伸ばす「食べ方」も浮かび上がってきます。ご飯などの主食からではなく、おかずから先に食べる。そうすることで、主食でお腹がいっぱいになって食べるおかずの品数が減ってしまうことを防げます。

 ちなみに、主食はパンよりもご飯のほうがお勧めです。日本人であれば、やはりご飯を主食にすることで、おかずのアレンジの幅が広がり、DVSの点数が上がりやすいからです。パンと漬物、パンと味噌汁、パンと焼き魚といった組み合わせは、ちょっと難しいですよね。

 このDVSを用い、ある地域で高齢者の生活機能(買い物に行ったりできること)との関連性を5年間にわたって追跡調査したところ、DVSのスコアが9点以上だった人に比べて、4~8点の人は生活機能低下のリスクが1.18倍、3点以下の人は1.64倍であるとの結果が出ました。やはり、高齢者にとって粗食信仰は危険といえます。

 とはいえ、DVSの得点は3~5点の人が最も多い傾向にあります。したがって、9点以上を達成するのはかなり厳しい。そこで、9点以上はあくまで最終的な目標とし、フレイル予防の観点からは、まず7点を目指すところから始めてもらえれば一定の効果が期待できると思います。

サプリメントの注意点

 栄養素のバランスを取るために、サプリメントを活用するのも有効です。ただし、注意点があります。サプリではお腹は膨らみません。そのため、食事と違ってサプリは多く取りすぎてしまう危険性があり、そうなると特定の栄養素だけを過剰に摂取してしまうことにつながります。サプリで栄養バランスを補おうとして、逆に栄養バランスを欠くことにならないように気を付けてください。

 これまで見てきた老いを防ぐための多様食は何歳から始めればいいのか、いつからしないと間に合わないのか。最近、年齢の壁がよく言われていますが、さまざまなデータや経験をもとに、私は70代が「高齢者向けの健康常識」を意識したほうがよい境い目だと考えています。したがって、70代に備えて食生活を見直すのがよいでしょう。

 習慣は簡単には変えられません。昨日までDVSが3点だった人が、今日から9点にするのは至難の業です。そのため、できれば準備は70代に入る前に始めることをお勧めします。無論、すでに70代になっているからといって、始めるのに遅いことはありません。そして、とりわけ80代になったら、とにかく粗食信仰からは離れ、好きなものを中心にどんどん食べることを意識すべきだと思います。

 老い支度は食にあり。私はそう考えています。

新開省二(しんかいしょうじ)
女子栄養大学教授。1955年生まれ。愛媛大学大学院医学研究科修了。医師、医学博士。専門は老年学・公衆衛生学。90年に文部省在外研究員としてトロント大学医学部に留学。愛媛大学医学部助教授等を経て、2015年から20年まで東京都健康長寿医療センター研究所副所長を務める。『死ぬまで介護いらずで人生を楽しむ食べ方』等の著書がある。

週刊新潮 2023年1月19日号掲載

特別読物「簡単『スコアチェック』で実践 老けないための『多様食』」より

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