痩せている人ほど早死に? カロリー摂取量増加で健康増進 老けないための「多様食」とは
バランスの取れた食事のための指標
とはいえ、もちろん暴飲暴食は論外。当然のことですが、しっかりと栄養を取るにもバランスが肝心です。
「そんなことは言われなくても分かっている」
そう思う人も多いかもしれません。しかし、当たり前のことほど意外と難しいもの。実際、知識として頭では理解できていても、普段の食生活でバランスのよい食事を意識的に実践できている人が果たしてどれだけいるでしょうか。
いずれにしても、あれもこれも食べないといけないのか……と、正直、おっくうに感じる人が少なくないのではないでしょうか。現実的には、なにかしらの「指標」がなければ、日々の生活の中でバランスの取れた食事をするのはなかなか難しいと思います。現代はまさに多様性の時代です。それでは、どうすればバランスのよい食事、すなわち多様性のある食事を実践できるのでしょうか。
摂取カロリーの増加で健康を増進
研究所時代に私たちのチームはバランスの取れた食事を促すガイドラインとして「多様性スコア(DVS)」というものを作成しました。このDVSの特徴は「簡便性」です。バランスのよい食事を取りたいと願っていても、ビタミンは足りているか、鉄分は不足していないか、タンパク質は充分か、カルシウムをもう少し取ったほうがいいのではないか……と、毎日事細かに意識できる人は、アスリートでもない限りそうはいません。
2020年から現在にかけて、私たちはこんな調査を行っています。
65歳以上の人を対象に一定期間、1日当たりの摂取量をカロリーは400キロカロリー、タンパク質は15グラム増やして筋トレやウオーキングをしてもらう(A群)。カロリーは100キロカロリー、タンパク質は15グラム増やし、同じく運動をする(B群)。バランスのよい食事に関する栄養指導のみを行う(C群)。それまで通りで何も変えない(D群)。
その結果、最も運動パフォーマンスが上がったのはA群でした。400キロカロリーも増やして大丈夫かと懸念されたのですが、B群よりも効果があった。なお、C群やD群は全く変化がありませんでした。
ここから分かるのは、かなりカロリー摂取量を増やしても高齢者の健康は損なわれるどころかむしろ増進すること。そして、いくら栄養指導をしても言うだけでは効果がないことです。ましてや、多様食を推進する指標やガイドラインをいくら作ったところで、それが複雑でややこしく、現実性に乏しければあまり意味がないのです。
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