警官、自衛官のなり手がいない! 2744集落が消滅! 少子化に打つ手なし「ディストピア日本」の未来図

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送配電工事で人材不足が深刻化?

 勤労世代(20~64歳)の減少も社会を停滞させ、企業経営を大きく変える。

 勤労世代は旺盛な消費者でもある。例えば、住宅や自動車を購入し始める30代前半の人数を、過去の年間出生数を基に計算すると、今後30年で3割ほど少なくなる。どちらも裾野が広い産業だけに、この減り方は日本経済にかなりのインパクトを与えることだろう。「20年後の20歳人口」もおよそ3割少なくなる。新規学卒者がここまで減ったのでは、あらゆる分野で人手不足が深刻化する。

 大企業であっても求める人材を十分獲得できないところが出てこよう。技術者が少なくなれば、さまざまな機器のメンテナンスが遅滞する。

 中でも社会への影響が大きそうなのが送配電工事だ。鉄塔の老朽化が進み建て替え需要は大きくなってきているが、巡視や保守を含めた作業は重労働で人手不足が常態化している。

 政府は原子力発電所の新増設や建て替えは「想定していない」としてきた方針の転換を図る構えを示すなど「発電の在り方」ばかりに力を入れているが、送電網の老朽化対応が停滞したのでは脱炭素化どころか電気の安定供給がままならなくなる。

「若い力」の不足

 新規学卒者の減少による人手不足は公務員も例外とはいかない。市役所や町村役場は45年には必要とする職員数の8割程度しか確保できなくなるとの民間シンクタンクの予想もある。

 さらに警察官や自衛官、消防士といった「若い力」を必要とする職種で人手不足が深刻化すれば、日本が誇ってきた安全神話は崩壊につながる。警視庁は42年には警察官の4割が50歳以上になると推計している。

 自衛隊は定年退職後の再任用者を部隊などでも活用する方針だ。防衛力強化のための財源をめぐり政府・与党内で激しい議論が起きているが、このまま少子高齢化が進んでいったならば、「60代の退職自衛官が80~90代の国民を守るために命懸けで戦う」といった日が来るかもしれない。

 若者の減少は日本の労働慣行も大きく変え、年功序列による人事制度を崩壊させることだろう。年功序列は退職する人と同規模かそれ以上の新人が入ってくることを前提としているためだ。

 多くの企業は人手不足を定年延長や再雇用の拡大で補おうとしているが、年功序列の人事制度を残したままでは、賃金の上昇カーブを全体として抑えざるを得ない。そうなれば若い世代ほど割を食い、閉塞感が広がる。転職者も増えるだろう。結果として終身雇用も崩れ、成果主義的な人事評価制度が広がることとなる。すべてで人手が足りなくなる人口減少社会は、雇用の流動化が必然的に進む社会でもある。

 そうでなくとも、デジタル技術が急速に進歩・普及し、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応が不可避となっている。リスキリングをはじめとして従業員個々人の能力アップが問われ、かつてのように「勤務年数の長さ=職能の高さ」とはいえなくなってきた。入社年次に必要以上にこだわる制度が続くはずがない。

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