半数がコロナ感染者? 中国からの直行便を減らしても、訪日中国人を抑えられない理由

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 今月8日、成田空港の第2ターミナルの到着ロビーは、思いの外閑散としていた。この日は、昨年末に中国政府が決定した国外旅行の段階的再開の初日だ。中国人観光客がどっと出てくるかと思ったら、中国本土からの便は杭州発と上海発が1便ずつのみ。しかも、到着してもなかなか乗客が姿を現さない。コロナの検査等に1時間以上かかっているためだ。

「ご存じのように昨年12月14日、中国政府はそれまでのゼロコロナ政策を事実上撤回しました。そのため、感染拡大に歯止めが利かなくなり、6億人が感染したとか、大都市では8割が陽性者になっているとも報じられた。実際、12月26日に伊ミラノのマルペンサ空港に到着した北京と上海発の航空機2便の乗客を検査したところ、半数がコロナ陽性者だったのです」(外信部記者)

東南アジア経由で…

 この調子でコロナ患者に押しかけられたらたまったものではない。日本政府は、中国発の増便を控えるよう各航空会社に求めるなど、緊急の水際対策を30日から適用。今月8日には陰性証明書を必須とし、検査方法を精度の高いものに切り替える、さらなる強化に踏み切った。約21億人が移動する見込みの春節を目前にギリギリで押しとどめたかに見えるが、中国事情に詳しいシグマ・キャピタル代表の田代秀敏氏が言う。

「目下、日本への便は数が極端に絞られており、飛行機代も片道数十万円かかります。また、陽性判定となれば7日間の施設隔離になってしまう。中国人は日本旅行が大好きですが、このためタイやインドネシアやシンガポールなど東南アジアに人が流れているのが実情です。それらの国々は、中国人観光客への規制を敷いていません。その一方で、東南アジアの国々からは毎日旅行者が日本へやって来ている。いくら中国人を空港で足止めしても、コロナ対策が尻抜けになってしまうのは明らかです」

水際対策を長く続けられない理由

 水際対策も、水漏れ寸前である。さらには足元から悲鳴が上がっているのだ。

「政府はインバウンド拡大を掲げ旅行業界も投資をしてきました。中国人観光客向けにホテルを改装したり、クルーズ船が横付けできるように港を整備し“爆買い”に期待していたのです。しかし、コロナ禍でほとんど回収できていない。観光業界は自民党と公明党の支持基盤。岸田総理もずっと水際対策を続けるわけにはいかないでしょう」(同)

 堤防が“決壊”するのはそれほど先のことではなさそうだ。

週刊新潮 2023年1月19日号掲載

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