五代目襲名の江戸家猫八 難病との12年の闘いを経て31歳で入門した「逆境人生」を明かす
動物園通いで新ネタを開発
手本とした父は、平成28年に66歳で他界した。
「子どもの頃、父と入浴中にウグイスの指笛をやろうとしたら“貸してごらん”と、僕の小さな小指をくわえてホケキョと鳴いてくれたことがある。その時の感動と、父が小指の付け根をかんだ感触はいまも記憶に残っています。父はよく“無理に後を継がなくていいが、ウグイスだけは鳴けるようになってほしい。それが江戸家がつながっている証になるから”と言っていた。僕の覚悟を知りたがっていたのかも」
独自色を出そうと全国の動物園を巡り、テナガザルやアルパカなどの新ネタを開発。令和2年に浅草芸能大賞新人賞と芸術選奨文部科学大臣新人賞をダブル受賞するや、猫八襲名の機運が高まった。
「受賞した時の“江戸家の伝統を受け継ぎながら独自の芸を作り上げた”との評価がうれしかった。父が母に残した“せめて70歳まで猫八でいたかった”という言葉。その父が70歳になる年に大きな賞を頂けたことも不思議な縁です」
晴れての襲名披露興行は、3月21日に上野・鈴本演芸場からスタートする。
「50日間の長丁場。色物がトリをとらせてもらえることに感謝しながら、五代目としての覚悟を持って勝負したい」
日本が誇る、伝統文化のバトンがまた一つ――。
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