五代目襲名の江戸家猫八 難病との12年の闘いを経て31歳で入門した「逆境人生」を明かす
動物のものまねで知られる演芸家・江戸家猫八の名跡が3月に復活する。五代目を襲名するのは江戸家小猫(45)だ。曾祖父は初代猫八で、祖父は昭和30年代の人気お笑い番組「お笑い三人組」や、中村吉右衛門主演の時代劇「鬼平犯科帳」にもレギュラー出演した三代目。四代目の実父は演芸の世界にとどまらず、テレビ司会業でも活躍した。
当の小猫が言う。
「いつかは継ぎたいと思っていました。猫八を背負うことで変化するものもあるでしょうが、自分らしく積み上げてきた芸のスタイルは変えないつもり」
高校3年生で難病・ネフローゼ症候群に
師匠は父。入門は立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科に入学が決まった平成21年、31歳の時だった。
「高校3年生の折、難病のネフローゼ症候群を患いまして。2カ月で学校に戻れるはずが、実際には卒業式にも出られず仕舞い。その後は再発を繰り返して1年ほど入院し、退院後も“社会復帰は難しいから”と、闘病生活は通算12年に及びました」
大学院への進学は闘病中。
「合格した時は、失いかけていた自信を少し取り戻せた。この年の秋に父が四代目を襲名し、名乗っていた小猫が空席に。“自分が受け継がなくては”と思い立ち、長い闘病期に一度は諦めかけていた動物ものまねに本格的に取り組むことにしたんです」
言葉通り、平成23年に大学院を修了すると、二代目江戸家小猫を襲名した。
「寄席だけはほかの舞台と違うんだと、父は共演の中で芸のイロハを教えてくれました。1年半ほどですね。お茶目で色気があった祖父と、高座に上がるだけで周りをパッと明るくする華があった父。でも、僕はただただ真面目なんです」
それがコンプレックスで悩んだ時期もあったという。
「ある時、お客さんが“二人にはない面白さがあるね”と言ってくれた。父や祖父とは違う真面目な語り口だからこそ作り出せる空気はある。それが僕の個性と教えられました」
[1/2ページ]