大河オタク・松村邦洋が熱弁する「歴代ベスト5」 家康主人公作品が二つランクイン
たけしに目移りして大河がおろそかに
〈そんな大河愛溢れる松村にして、一時、日曜夜8時のルーティンから離れていた時期があったという。1984年「山河燃ゆ」、85年「春の波涛」、86年「いのち」の3作。大河が時代を明治以降に移したいわゆる「近現代3部作」の頃だ。〉
ちょうど高校生だったんですが、(ビート)たけしさんにハマってしまいましてね。その時間、裏番組で「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」をやっていたんです。そっちに目移りして大河がおろそかになってしまいました。
でも、大人になって総集編などで見てみると、3部作はどれも面白いんですよ。橋田壽賀子さん脚本の「いのち」なんて三田佳子さんの女医さんがきれいで……。同じ医者を演じた渡辺徹さんも良かった。コロナで家にこもっていた3年前かな。DVDで「いのち」を見て感動して、徹さんに「いま『いのち』見ているんですよ。すごくいいですね」ってメールしたんです。「何で今頃見てるんだよ。松村、ホントに好きなんだな」「いや~徹さんの人柄が溢れてますよね」「うれしいね。今頃感想言ってくれるのは松村くらいだな」。そんなやり取りをしたんですが、その徹さんも昨年、亡くなってしまいましたね。早過ぎましたよ……。
それはともかく、そんな僕を大河の世界に引き戻してくれたのが、「いのち」の翌年の、あの「独眼竜政宗」。これを第5位にします。
名シーン撮影の裏側
〈1987年放映の「独眼竜政宗」は仙台藩主・伊達政宗を描いて大ヒットし、平均視聴率39.7%と、歴代大河の中でも最高の数字をたたき出した。「史上最高の大河ドラマ」と呼ばれることも多い名作である。〉
とにかく役者さんがすごいですよね。政宗を演じた渡辺謙さんは、僕の中では高部知子さん主演の「転校少女Y」というドラマのバレーボールのコーチ役だったんですが、その渡辺さんを時代劇に思い切って使ったのが最高でした。
父親役の北大路欣也さん、政宗の殺害を企む母親役の岩下志麻さん。虎哉和尚を演じる大滝秀治さんも良かったですが、何より震えがきたのは、秀吉役の勝新太郎さんとの対決シーンです。天下を取った秀吉は、小田原攻めに参じるよう政宗に命じましたが、政宗は応じませんでした。秀吉は激怒し、やむなく政宗は小田原に向かうことに。まかりまちがえば首を落とされる場面に、白装束で臨んだんです。「もう少し来るのが遅ければ、お前の首はなかったぞ」。秀吉が政宗の首に杖を当てて言うシーン。その気になれば突き落とされるのに、政宗に背を向けて崖から立小便をするシーン。どれも緊張感たっぷりでした。有名な話ですが、その緊迫感を出すため、勝さんは一切、謙さんと事前に会わないようにしたとか。それがあの名シーンにつながったんですね。
当時、プロ野球では清原(和博)さんが西武ライオンズで大活躍していました。実は、信長と秀吉、政宗の年齢差って、長嶋(茂雄)さん、王(貞治)さん、清原さんの年齢差と似ているんです。それぞれ3~4歳、27~30歳の違いで。だから僕は勝手に、政宗を清原さんになぞらえて、秀吉に対峙する政宗を、ONの記録に挑む清原さんのような気持ちで応援していたんですよ。
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