半導体戦争で板挟みになる韓国 米国の圧迫と中国の嫌がらせ…頼みの綱は日本の輸出管理撤廃
半導体戦争でも二股を続ける韓国。米国が「中国と別れろ」と圧力をかけると、中国も「技術者の入国禁止」で応じた。砲煙が激しくなる一方のこの戦争を韓国観察者の鈴置高史氏が“洞ヶ峠”から読む。
韓国を圧迫したのは駐日米国大使
鈴置:R・エマニュエル(Rahm Emanuel)駐日米国大使がブルームバーグの電話取材を通じ、韓国に露骨な圧力をかけました。韓国も中国に対する半導体輸出規制に参加するよう要求したのです。
「日本など3カ国との取り決め必要―対中半導体輸出規制で駐日米大使」(1月10日、日本語版)から、半導体分野での中国封鎖網に関する大使の発言を拾います。
・日本だけでなく韓国、オランダとも取り組まなければならないのは明らかで、多くの作業が必要になるだろう。
・全当事国が交渉のテーブルに着いており、その結果について相互に利害を共有している。(取り決めは)多国間のものでなければならない。
1月13日(現地時間)にワシントンで開いた日米首脳会談を前にしてのインタビューです。首脳会談の焦点のひとつが米国が主導する対中半導体封鎖網に日本が加わるか――でした。
日本は参加を決断していますが、半導体の製造に使う装置を作るほかの国も参加するかを気にしています。米国の要求する高精度の製造装置の対中輸出を日本がやめても、ほかの国が続ければ意味がないうえ、日本がシェアを落とすだけだからです。
「要求はない」と、とぼける韓国
ロジック半導体の雄である台湾は米国の要求に応じると見られています。製造装置で圧倒的な力を誇るオランダも同調の方向と報道されてきましたが、ここに来てやや揺れています。
1月17日の米蘭首脳会談で、対中輸出規制に加わるよう求めたJ・バイデン(Joe Biden)大統領に対し、M・ルッテ(Mark Rutte)首相が即座には色よい返事をしなかったのです。Voice of America(VOA)の「No Progress on Netherlands Joining US Chip-Export Ban to China」(1月17日、英語版)が伝えました。
2022年11月の蘭中首脳会談で習近平主席はルッテ首相に「経済問題を政治化するな」と圧力をかけています。ただ、米国の説得も相当に強硬なようです。
ルッテ首相は1月19日、スイスのダボスでブルームバーグに「そこ[輸出規制]へ到達できると、かなり自信を持っている」と語りました。「日本とオランダ、米主導の半導体対中規制に近く参加へ―関係者」(1月20日、日本語版)をご覧ください。
米中のせめぎ合いが激しくなる中、メモリー大国の韓国だけが態度を鮮明にしていない。そこでエマニュエル大使は、対中包囲網は「多国間のものでなくてはならない」と語り、韓国も加わるよう強く迫ったのです。
原記事では見出し「US Needs Japan, Netherlands and Korea on Chips Deal, Envoy says」(1月9日、英語版)に「韓国」を入れ、より明確に圧迫しています。
大使の意を汲んだブルームバーグは、韓国・産業通商資源省の報道官にコメントを求めました。答は「米国による対中輸出規制について米側との協議は行っていない」でした。
韓国の態度はいつもこうです。都合が悪くなると「そんな要求はされたことはない」と、とぼけます。反米の文在寅(ムン・ジェイン)政権も、「西側に戻った」と自称する保守の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権もそうした態度に変わりはありません。
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