台湾・半導体大手「TSMC」は日本経済の救世主…その裏で台湾で高まる“2つのリスク”とは
台湾侵攻への警戒感
中国のゼロ・コロナ政策の影響や米国と中国の間のハイテク分野での競争激化が台湾の輸出に暗い影を投げかけている。
台湾では、輸出の減少が企業業績の悪化につながり、賃金の減少を招いて消費を萎縮させるという負の連鎖が起きつつある。
「泣き面に蜂」ではないが、逆風にさらされる台湾経済には地政学リスクというもう一つの大きな悩みがある。
イエレン米財務長官が昨年11月末「米国企業は台湾に対する中国の脅威など地政学リスクに留意する必要がある」と述べたように、「中国が台湾を武力で制圧する」ことへの警戒感は高まるばかりだ。
前述のTSMCが 日本での工場建設に積極的なのは地政学リスクを低下させる狙いがあると言われている。TSMCは日本以外の工場建設にも意欲的だ。昨年12月、米西部アリゾナ州に先端工場を建設する計画を発表し、欧州でも工場の建設を検討している。
地政学リスクが台湾経済の空洞化を引き起こし始めているのだが、この問題は日本にとって「対岸の火事」ではない。
岸田文雄総理は13日に開かれた日米首脳会談で新たな国家安全保障戦略を説明し、バイデン大統領はこれに全面的支持を表明したことで、両国は今後、台湾有事を念頭に自衛隊と米軍の抑止力や対処力を向上させることになったからだ。
米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」は9日、中国人民解放軍が2026年に台湾に上陸侵攻を図ると想定した机上演習(ウォーゲーム)の結果を公表した。
それによれば、米軍が台湾側で参戦したシナリオの大半で、中国は台湾制圧に失敗するものの、開戦当初で台湾軍がほぼ全滅し、在日米軍や自衛隊の基地が攻撃されるため、日米も多数の艦船や航空機を失うことが明らかになった。
日本が米軍の参戦部隊の基地使用を認めなければ、台湾側が確実に中国に敗れることもわかっており、今回の日米首脳の合意により、自衛隊を始め日本の役割はさらに大きくなることは確実だろう。
ウクライナ戦争では欧米諸国が自国の軍事施設などが攻撃を受けることなく軍事支援を行っているが、台湾有事の際、このやり方は通用しない。
日米同盟の強化で中国への抑止力を高めることはもちろん大切だが、日本経済への地政学リスクを回避するため、より一層の外交努力も必要なのではないだろうか。
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