台湾・半導体大手「TSMC」は日本経済の救世主…その裏で台湾で高まる“2つのリスク”とは
半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)の魏哲家CEOは1月12日の会見で「現在、日本で2番目となる半導体工場の建設を検討している」と述べた。
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TSMCは現在、日本で初となる半導体工場を熊本県に建設しており、2024年末までに量産を始める計画だ(投資額は約1兆円)。
工場建設による経済効果は10年間で4兆3000億円に上り、1700人の新たな雇用が生まれるとの試算がある。
熊本県は地元経済界とともに地域を挙げて受け皿作りを進めており、台湾とのパイプを一段と太くするため、蒲島郁夫知事らが11日から14日にかけて台湾を訪問していた。
TSMCは2番目となる工場の詳細について明らかにしなかったが、「熊本県に続け」とばかりに自治体間の誘致合戦が今後過熱することが予想される。
TSMCは日本経済、特に地域活性化のための救世主のような存在になりつつある。
TSMCの昨年第4四半期の決算は売上高、純利益ともに過去最高を更新した。売上高は前年同期比43%増の約2兆7000億円、純利益は78%増の約1兆3000億円だった。昨年は通年ベースでも売上高、純利益ともに過去最高を更新した。
我が世の春を謳歌していたTSMCだったが、大幅な増収で急成長が続いた昨年末までの状況が一変している。
勢いを失った米国企業のあおりを受けて
TSMCは12日「今年第1四半期の売上高は前年同期と比べて最大5%減少する」との見通しを発表した。減収となれば、2019年第2四半期以来、約4年ぶりとなる。
年間の設備投資計画も5年ぶりの減額となる見込みだ。今年の投資額は昨年に比べて最大1割以上減らし、320~360億ドルになるとしている。
TSMCの経営は受託生産で成り立っており、顧客の約7割は米国のIT大手企業だ。だが、勢いを失った米国企業が軒並みパソコンやサーバーなどの投資を縮小しており、これらに装備される先端半導体を製造するTSMCがその影響をもろに受ける形だ。
米調査会社ガートナーは 発表した昨年第4四半期の世界のパソコン(PC)出荷台数は前年同期比29% 減の約6530万台だった。四半期ベースの落ち込み幅は調査開始以来、最も大きかった。新型コロナのパンデミック下の在宅勤務の広がりによるPC特需が一巡したことが主な要因だ。
苦境に陥っているのはTSMCばかりではない。
世界のIT大手企業に部品や半導体を供給している台湾の主要19企業の昨年12月の総売上高は前年同期に比べて14%減少した。
IT産業の不振は台湾経済の大黒柱である輸出に既に大きな打撃を与えている。
台湾の昨年11月の輸出額は前年同月比13%減の362億3000万ドルとなり、下落幅は2016年2月以降で最大となった。12月も8~12%の減少となる見通しだ。
最大の下げ幅となったのは約4割のシェアを占める中国・香港向けだった。
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